名盤衝突

0

     たまたま聴いていたゴンチチのFM番組がコトの発端。ニルソンのことを話し

    てた。人前で演奏するのが好きじゃなかったとかなんとか。若い時に観た

    「真夜中のカーボーイ」で主題歌?歌ってたニルソン、なんとなくタダ者では

    ないと感じて、以来幾星霜。そういう人だったのかい、そんならちゃんと

    聴かなくちゃならんだろ、amazonで数枚CDを予約し、届いた二枚を聴いて

    たんだ。この二枚やっぱりというか予想通りイイんだ。

     

     んでね、次の一枚が届いて、一階にある5連奏のデッキにセットして、聴く

    ために地下に降りたのよ。このデッキはオークションで入手した古い機種で、

    読み取らないことがあったりスタートが遅くなったりがしばしば、そんときも

    なかなか始まらないのよ。地下の椅子に座りパソコンいじってたら、いきなり

    曲が流れ始めたワケ。聴いた瞬間鳥肌立っちまって、どビックリ。老齢意固地な

    アタイにも鳥肌立つことがあることにも驚いたけど、それよりなによりニルソン

    のアルバムの素晴らしさに驚愕したんだわさ。

     

     それまで私が抱いていたニルソンってのは、作曲なのか歌手なのかよう

    ワカラン人、歌も上手いのかイマイチ実感がない、曖昧な存在だった。そのこと

    が、気にはなるけど、長らく疎遠であった理由だったんだろうな。CDを買うに

    あたってチョイと調べたら、歌い手としての実力はあったらしく。でもなぁ、

    それほどの歌い手なのかと疑惑なココロだったのよ。

     邦題「夜のシュミルソン」。このCDを聴いて、アタイのちっぽけな疑惑は、

    吹っ飛んで宇宙の彼方ブラックホールに吸い込まれていったのでアリマスル

    のだ。

     

     歌声がすばらしい。ささやくようでいて低音から高音まで柔らかく伸びる。

    多分、これはクルーナーといわれるもんだろ。なんちゃってな音楽ファンの

    アタイが言う事だから差し引いて読んでけれ。クルーナーの代表といえば

    ビング・クロスビーじゃないかね。彼の正統後継者としてパット・ブーン、

    ちょうどプレスリーの登場と同じ頃の人、でも時代の軍配はプレスリーに

    挙ってもうたと聞いた覚えがある。フランク・シナトラやナット・キング

    コールも同種の歌手だし、日本では藤山一郎、最近では大瀧詇一だと浅学な

    アタイは思ってるんだわさ。

     

     曲はすべてスタンダードナンバー、全部知ってるっていうんだから嬉しい

    じゃあ〜りませんか。加えて、編曲・指揮はゴードン・ジェンキンスだって

    いうんだから鬼に金棒でっせ。ストリングス中心の甘く流麗な演奏とニルソン

    の歌声が相俟って、これを名盤と言わずになにが名盤なんだ! と一人悦に

    入ってるのでありますわいな。とはいえ、人に紹介されて気に入ることは

    ほとんどないアタイだから、いささか誇大に聞こえるこの紹介を読んで、

    聴いてみて、共感していただけることはほとんどないんだろうなぁ。

     

     入手以来こればっか聴いてるのよ。あぁ、こんなに聴き続けたら飽きちゃう

    のに、と思わないこともないけど、これほどアタイの♡をがっちり鷲掴み

    したのなら、飽きることなんかあるの? トコトン聴いたろやないか。

    でね、重ねて聴いてみれば魅力は増してくるというか発見があるというか、

    ますます良くなることにうれしさ倍増。

     発見の一つは編曲にある。例えば、冒頭にAs time goes byがちょっと

    だけ歌われ(まるで前菜みたいだ)、終わることなくそのままLazy moonに

    移り、Lazy moonの終わり部分にはOver the rainbowのイントロが流れ、

    そのままOver the rainbowになるかと思いきや二曲目のFor me and my gal

    となり、といった案配が全曲にわたって繰り広げられるんだ。

     

     曲間の無音も短かったり長かったり、いたるところに編曲者の考えが見え

    隠れして、まったく飽きることはない。マントヴァーニ、パーシーフェイス、

    101ストリングスと似たようなオーケストラは数多あるけど、Jazz畑の

    ゴードン・ジェンキンスだから、単に受け継いでいるだけの懐古趣味ではなく

    モダンな感じがあってさ、それもまた魅力倍増の大きな要因だろうと愚考する

    ワケ。まったくもって今までこんな名盤となぜに出会えなかったのかと思う

    反面、生きているうちに出会えたことの歓びはなにものに代え難いときた

    もんだ。

     

     そんな御一人様大賛辞の嵐の中、この手の音楽は作られた当時も、今は

    なおさらのこと理解されることなんかないんだろうなぁとも思ってしまう。

    リズム楽器の雄ドラム大将の出番はほとんどない。出演者はバイオリンを

    主役としてチェロやコントラバス(多分)、オーボエやフルート皆々様の

    クラシック音楽メロディ楽器ばかりだからさ。どこを探しても、ソウルや

    ヒップホップのかけらも見当たらない。現在主流のアップテンポ皆無だし

    弾むようなリズムもない、あるのは粛々と流れる優しいメロディ(きわめて

    美しく、作り手と会話することができるもんだけど)だけだからね。

    フランス映画「幸福」を彷彿とさせるこのアルバムを、名盤だとわかって

    くれる人は数少ないにちがいない。最後に、録音映像をご紹介しておきます。

    https://www.youtube.com/watch?v=4H2922CVjV8

     

     

    名盤はあくまで私のものだけ・・・・・・・・・な、店主でした。

     


    関連する記事
    コメント
    ロックの世界でアル中から軌跡の生還を果たしたのは3人しかいないと囁かれていてニルソンはその一人。ウィズアウトユーの絶唱も見事ですよ。
    • TollG
    • 2017/03/21 8:21 AM
    コメントする








       
    この記事のトラックバックURL
    トラックバック

    calendar

    S M T W T F S
         12
    3456789
    10111213141516
    17181920212223
    24252627282930
    31      
    << March 2024 >>

    selected entries

    categories

    archives

    recent comment

    links

    profile

    書いた記事数:690 最後に更新した日:2023/12/23

    search this site.

    others

    mobile

    qrcode

    powered

    無料ブログ作成サービス JUGEM