卒業宣言!
ひがな毎日ちっちゃなツマミの店で掃除をしたり金魚とメダカのお相手をしている店主。
それに比べてカミさんはますます忙しくスマシ顔で帰宅も超遅いのであります。そんな日々
に押し寄せる難物は「家事」。いわゆる外仕事ならば(家事も仕事だけど)、家事ほど生活
に密着しませんから手離れもいいし頭の切り替えもできる。お酒を飲んで気晴らしもできる
けど、そうはゆかないのが家事で。お酒を飲んだら後片付けをせにゃーならん。とにかく質
が違うんです。
陸上競技に近代五種があります。19世紀のナポレオン時代に、敵陣を突っ切って自軍まで
戦果を報告する兵隊の故事にならって作られ、馬術・射撃・フェンシング・水泳、ランニン
グがあります。私は、それを家事にあてはめて考える。料理・掃除・洗濯・裁縫、とここま
ではスラスラ来たけど5番目が思い浮かびません。なんだろうな〜5つめは。強いて言えば
お風呂かな〜、ゴミ出しかな〜。
裁縫はすでに死語、私の家だってせいぜいボタンの付け替えとかズボンの丈詰め程度だか
らほとんど煩わしいことではありません。母の世代ならば、布団を作ったり、着物の洗い張
りから丹前や褞袍(どてら)まで作っていたし、父のワイシャツのアイロンがけも毎日して
ました。それに比べりゃあ今はまったくなんにもしてないのと同じ事。
お風呂にしたって、今は自動ですからね。私が子供の時は東京だって、水を張るのも注意
しないとすぐに溢れちゃうし、薪で焚いていたし、その後ガスになったとはいえ外釜だから
下手すると湯船の湯が煮えたぎっちゃうなんてこともあるわけで、かなり気を使わにゃあ
なりませんでした。それに比べりゃあ今はまったくなんにもしてないのと同じ事。
ゴミ出しが家事と言えるのかどうか微妙だけど、問題点は分別ゴミの曜日をすぐに忘れ
ちゃうてことでして。燃える燃えない再利用などがまだまだ新米家事職人には覚えられず、
これは相変わらずカミさんの担当。
でも残る三種競技は今でもなかなかのもんで私にとってはけっこうむずかしい。っていう
か困ったことに得意不得意がモロに出ています。
洗濯そのものは洗濯機任せですからどうってことない。干すのも嫌いじゃない。けど、畳
んでタンスにしまうのがどーにもこーにも苦手でして、部屋に積み上げた洗濯ものを横目で
にらむ日々が続いています。どうーしてたたむのが嫌なんだろう? やっぱめんどくさい
のが一番の理由らしい。カミさんがたたんでくれても私のものは私がタンスに入れるなくて
はならないけど、それがね。どうしても野積み状態になってしまうわけですわ。野積みの中
から下着を選ぶ、そんな事が少なくない。なんともだらしない始末。
同様に掃除もね、好きではありません。ハイッ。なんたって掃除は完璧にしても現状維持
ですから。なんにも新しいものは生まれません。床のシミとか壁のホコリに感情移入をすれ
ば新しい発見もあるかもしれないけど、それは達人じゃないと出来得ないこと。新しさを
感じにくい、最高でも現状維持という仕事は、私の本業のデザインの仕事とはまるっきり
反対の位置にあります。これを涼しい顔でこなしてゆくには仕事に対する価値観というか
対峙する姿勢がなにか決定的に違うような気がします。
これは洗濯もおんなじだけど、掃除の方が広いし手間がかかります。障子の桟なんか最
悪。はたきをかければいいんだけど、それがなかなか。習慣になっっていないですから。特
に我が家はすべて畳の部屋ばかり、床に目が近く、つまりはホコリは否応もなく目に入る。
廊下やトイレ、キッチンなんかも同様で「やらなくちゃ」と思うけども腰が重くて。
あ〜ぁ、いかんな〜。
その点料理はいいんですよ。なんたって新しいものにチャレンジできる、試すことが具体
的に現れますから。掃除を完璧にしても誰も気づかないけど、美味しい料理は誰だって賞味
できますもんね。そこで表題の「卒業宣言!」。
一週間ほどまえにカミさんが帰ってきて私が作った夕食を食べながら、突然料理の世界か
ら卒業することを宣言したのです。あなたがこんなに料理を出来るようになったんだったら
もう私が作らなくてもいいわね、と。ウーム。それも一理あるな、と思った私。しかも、こ
の不規則発言は私の心に大きく響きあっけにとられつつ突発的な笑いを引き起こし大爆笑。
なんかスキをつかれてしまいました。油断ですな、これは。そして、一息おいて思ったんで
すよ。宣言というのは思った瞬間に発言すれば、その時点から効力を発揮するんだなァっ
て。言ったもん勝ち、みたいな。当たり前といえばその通りなんだけど、そう思ってしまい
ました。
思えば好きでもない料理を結婚以来ひたすら毎日。30年以上も作り続けてきたんですか
ら、このあたりでもう卒業してもいいんですよ。ちなみに我が家で家族外食は滅多にないこ
と、年に1〜2回がせいぜいですもん。しかも、十数年前には結婚生活の存続の危機の際には
多大な迷惑をかけ、崖っぷちから救い出していただいた恩義のある方の宣言ならば、静かに
受け入れることは当然のことと理解しております。こんなわたしでも。
とはいえ、食事と家の掃除。まったくひたひたと音もなく迫り来る蟻の軍団のようです。
特に夕食準備は毎日待ったなしで、仕事の合間に冷蔵庫の食材のチェックと献立が頭をよぎ
る。朝はアメリカの思惑にまんまとはまりトーストだけだから問題はない。昼食も目玉焼き
+ウィンナ炒め+レタスの定番コースだからこれもよし。問題は夕食です。
お米を研がなきゃならないし、食材にあわせてのメニューを考えねばなりません。こんな
ことは主婦(古いね)の方々には雑作のないことでしょうが、新米の私はなかなか慣れず。
八百屋のおかみさんには「カンタンでいいんですよ」なんて言われるけど、そのカンタンが
むずかしいんですよ。カンタンにするってことは全体を理解できてないとできないから。そ
うじゃありません?
よくアメリカの番組で一週間分の買いだめをするなんてことを耳にしたけど、そんなこと
出来っこない。生野菜だって肉や魚だってそんなにもちません。大根なんか一本買ってちょ
っと気を抜くとあっという間にシナシナになっちまう。じゃがいもやタマネギは長持ちする
けど、それを使った料理の知識が少ない。シチューやカレーはそうそう続けられません。ア
メリカの買いだめはきっと冷凍かインスタントに違いない、なんてことをようやく今理解で
きた次第で。なんとも情けない。
大した仕事でもないけどいちおう仕事をして、家事もそこそここなすとなればけっこうな
忙しさ。世の人はこれを忙しいというのかどうかわからないけど。なんかいつも追われてい
るような気がします。
と言いながら、今日の献立は・・・・・・・・・・・・と考えつつの、店主でした。
- 2012.06.27 Wednesday
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- 09:51
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- by factio