思えば今年もあとわずか
思えば今年もはや数日。早いものです。カセットテープの残りが少なくなると回転が早く
なるように年齢とともに時間が経つのが早くなる。よ〜な気がする。けど、そんなこと言っ
たって今じゃカセットテープを知らない世代が大多数だし。アインシュタインは光速度こそ
が絶対不変唯一のもので、時間は伸びたり縮んだりするもの、と言ったけど。それは物理法
則の世界だけじゃないっ。特に一年の最大イベントである正月はあっという間、もう来たか
という感じが年々歳々強くなる。特になにもしない空虚な日々だとこれがさらにスピード
アップされるので、せいぜい充実した時を過ごす事で過ぎ去る時間のスピードを遅らせるこ
とが出来るような気、しかできない。アタシャつくづくそう思うのであります。
ふと思い立って山田風太郎「人間臨終図巻」をパラリ。大部な上下巻。63才を探したら上
巻の最後から二番目にあって、ふーむ。平清盛、高山右近、レンブラント、徳川綱吉、ノー
ベル、ドヴォルザーク、ストリンドベリ、乃木希典、豊田佐吉、巌谷小波、野口雨情、ルー
ズヴェルト、藤原審爾の死に際のエピソードが書かれている。そうか、野口雨情は63才で亡
くなったのか。「ある日座敷でぼんやり座っている夫に、風邪をひかないように夫人がうし
ろから羽織を着せようとしたところ、雨情は『死んでゆくのに羽織はいらない』といった。
翌年の一月二十七日、彼はひっそり侘しくこの世を去った」。あらゆる世界の人の死に際が
エピソードとともに語られるこの本は今の自分の年齢をひしひしと感じさせてくれる名著。
生きとしいけるすべてのものは死に行く運命にある。生き物なんて狭い世界ではなく、地
球や宇宙だっていずれは消滅するだろう。だからこそ、今この時が大切。充実したやること
はとことんやった気になることが私には大切なこと。言えばよかった、あーすればよかっ
た、なんてことはイヤですからね。なんでも感じたことは言うし、行動することにしていま
す。そのうちとかいずれとか機会があったらとかナンセンスざんす。だから、ちょっと声を
掛けて乗ってきそうもない相手には再びということはない。そうして私はだんだんと固まっ
てゆくのだろう。
そんな私にとって去年の最大の出来事はなんてたって12月22日のライブであることは間違
いない!! 誰がなんと言おうと。そんなこと誰も口出しはしないだろうけど。でも、それ
は毎週毎月なんてことは出来っこない。お楽しみがそうそうあってはならない。慌てる乞食
は貰いが少ない。関係ないか。でも当たらずとも遠からずのそんな感じで、空いた時間隙き
間を充実させなくてはなりません。せっかくの地下室がつまらないからね。だからというわ
けじゃないけど、そういうことなんだけど、の映画鑑賞会は来年も続きますの告知ご案内。
第7回 1月12日(土)PM7:00~ 「シャレード」 1963年 アメリカ 80点
監督 スタンリー・ドーネン
出演 オードリー・ヘプバーン、ケイリー・グラント
なんたって正月です。暗い映画は、ちょっとイカン。そういうもんでした昔は。恒例でし
たから。今だってTVはそんな感じ。昔映画で今TV、容れ物は変わっても中身はおんなじ。若
き未亡人のヘプバーンとちょっと猫背のケイリー・グラントの組み合わせ。ヘプバーンは私
の中では完全なオヤジ殺しで。サブリナではボガード、昼下がりの情事ではクーパー、パリ
の恋人ではアステア。名だたる名優との共演で素敵な映画が出来上がりました。今なら石川
さゆりでしょうか。コンビニで週刊誌を立ち読みしてたら亡くなった勘三郎との密会?が
報じられていたけど、芸能人たるもの、そうでなくちゃいけません。俗世間じゃ不倫とかな
んとかくだらない倫理観をふりかざすアホがいるけど。一般人と芸能者を同じ物差しでは
かってはいけません。感受性が豊かであるなら、それが異性(同性)の恋愛感情を素早く
キャッチしないはずがない。表現者として必要欠くべからざる資質だではないかい。20世紀
の名曲たち・第一集は前田憲男、鈴木章治などの大物との名盤だけど、彼女もオヤジ殺しの
血を受け継いでいるとアタシャ思うんだ。あの色気でねだられたらオヤジならずとも抵抗は
できませんて。で、この映画。脚本もいいしキャスティングもいい。ラブサスペンスの逸品
です。監督はミュージカルも手掛けたスタンリー・ドーネンですからおしゃれでテンポも抜
群でっせ。
第8回 1月19日(土)PM7:00~ 「座頭市物語」 1962年 大映
監督 三隅研次
出演 勝新太郎、天知茂、万里昌代
うら若き美少女Aのリクエストにお答えしての勝新座頭市。ネットで調べたら最初の4本が
正統?座頭市で以後は娯楽色が強くなったということで、まずはその4本を見比べています。
同時期の眠狂四郎は主演の市川雷蔵がキャラクターを把握して本領を発揮するまでに数本か
かったということから、座頭市も最初っから良いのかどうかわかりませんので。でも、一応
敬意を表して一番初めの座頭市を上映する予定。見比べて一番いいのを上映するかもしれま
せん。ま、そのとき話し合って上映作品を決めるということでいいんじゃないっすか。それ
にしても、少女Aはタケシ座頭市から時代劇に入ったということで時代を感じました。十三人
の刺客も現代版リメイクからだったということで。今の時代劇を貶すわけじゃないけど、昔
から観てる店主としてはどうなのよという気がしなくもない。久しぶりに観た数本の座頭市
の剣さばきはそりゃすごいもんですからね。剣ばかりじゃなく風景の切り取り方やテンポな
どすべてが今とは違う。本家を観た上でリメイクを観れば双方の違いがよくわかる。違い
まっか?
と、ここで座頭市物語が届いて早速拝見。どひゃー、えーですな〜。こりゃまったく。こ
れならこれを上映せずばなるまい。座頭市はこうだったのですかい。それがなぜに以後のシ
リーズでは変質してしまったのか。なんかわかるような気がしないでもない。
第9回 1月26日(土)PM7:00~ 「会議は踊る」 1931年 ドイツ 85点
監督 エリック・シャレル
出演 ヴィリ・フリッチュ、リリアン・ハーヴェイ
あらゆる映画本に登場するのがこの映画。超有名な名画だけど、店主未見ですから何とも
言えませぬ。ドイツ映画だし1931年という年代物ですから不安がないわけじゃない。85点
は双葉さんの採点だから悪くはないと思うけど、双葉さんが高採点の映画がすべて良かった
ということもなかったしね(いやほとんどは良かったんですよ)。先日BSで同時期に公開さ
れた「間諜X27」を観たんだけどこれがとても良くてね。だから古いからオモロウナイなん
てことはない。そんなことはわかっています。この映画の巻頭は穿いているストッキングを
直すシーンから始まるんだけど、これは主人公が娼婦であることを表現で、これにウット
リ。のっけから心をわしづかみされちまいました。サイレント映画の名残が色濃いこの時代
はセリフではなく動きで説明するなんてことは当たり前。映画の魅力は筋ばかりじゃなくあ
らゆるところに散りばめてあることを理解できるのはまったくけっこうなこと。だてに映画
を観てきたわけじゃない、年を重ねてきたわけではないのだぞ! あ〜、なんて偉そうなん
だ。
映画は出来上がった姿を変えることなくじっと佇んでいるだけ。いつでも誰にでも門戸を
開け放ち、優しく受け入れる。観る人の感受性によっていかようにも印象は変化する。なん
かつくづくそんなことを思ってしまいます。
あ〜ぁ、やることあんのに映画観てる場合か・・・・・・・・・・・の、店主でした。
- 2012.12.28 Friday
- -
- 22:59
- comments(1)
- trackbacks(0)
- by factio