凡日なにごともなし

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      先日のTV出演、即日来店されたお客様一人あり。インテリア茶箱
    http://aliceroses.exblog.jp/なる世界があり、その脚にツマミを使ってらっしゃる。やは
    り、強者なのだ。ピンポイントの情報に素早く対応する姿勢に感心してしまう。以前、カル
    トナージュの棚を頼まれて作ったけど、親戚のようでもある。が、茶箱だから強度もありス
    ツールにも使えるので、ツマミを脚にするのはちょっと。で、どこかで作ってもらおうとい
    ろいろ当たったんだけど、どこに頼んでも作ってくれな〜いと困り果てての依頼だから、早
    速試作してみましょう。
     ってことで、学校の旋盤を借りて作ってみた。高低太細の6種類がとりあえず出来上がっ
    た。上に付いているのは8ミリボルト。ボルトを抜けば単なる豚足ならぬ短足になるわけだ。
    このボルト、付けないと塗装する際に持つところがなくなっちゃうの。茶箱に付いているボ
    ルトがこの足のナットに捩じ込まれれば茶箱脚になるということ。塗装が思いのほか濃色に
    なってしまったけど、ま、これが精一杯。これでダメなら諦めていただくほかはない。

     先日のTV出演、即日お電話いただいた方二人。タンスの取っ手が壊れてもうて困ってる。
    どこに頼めばいいかわかんない。両者ともに妙齢の美女?だから、タンスは古く(多分)相
    応の思い出がしみ込んでいるからなんとか使えるようにしたいのだろう。わかりまっせ、そ
    の気持ち。ってことで、いずれはお宅にお邪魔して取っ手レスキューせねばならないだろ
    う。それも面白いだろう。

     ふと思い立って引出しをちゃんと直そうと思って。そのときは一階の店の隅っこに置いた
    んだけど。デスクの足元がごちゃごちゃしてて気持ちがわり〜の。ほいでもってTV撮影のた
    めに他の場所を整理したらこの引出しが困ったわけだ。
     しかもというかこの吊り材がいかにもダサイ。いかにも取って付けたようでカッコわるい
    と思っていたから、急ぎ地下に逆戻り。

     さて、最上段のペンシルトレイを装着しようかと、ふと思って。
     まずは両側のレールを取り付ける。ハッキリ言ってこれは簡単なのだ。

     トレイを乗せて、後部は爪に引っ掛かるようになってる。これ以上奥には行きませぬ。で
    も手前には動いてしまうから・・・・・・・

     いろいろあれこれ思案して、結局はネジでレールに固定してしまった。なにか良い方策が
    あるかもしれないと、これでもいろいろ考えたんでっせ。でも、どう考えてもこうする他に
    方法が思い付かないんだ。

     そこに引き出し前板を取り付けなければならんのだ。トレイは薄いから前板を直接取り付
    けることはできない。んだからさ、
     裏に木の部品を取り付けて、それにトレイを取り付けようと考えたわけ。これもいろいろ
    考えたんですよ。他に方法はないかって、ね。どうも、このトレイとレールと前板を組み立
    てるには他の部材が必要だと思うんだけど、その部材がないから推理するっきゃない。変な
    作り方をしてしまうと引き出しに笑われてしまいそうで。恐々慎重に事を進めたんだけどど
    うなのかな? 間違っちゃいないと思うけど。

     そうしてこうして組み上がったアクリル三段引き出し。右に鍵が付いてるけど、これをう
    まく使うことが出来ないんだ。ま、そのうちってことで。上部が空いているから、ここに棚
    板を仕込んでしまおうか。

     一挙にカッチョよくなってしまった。どうだい! エッヘン!! なんか立派だなぁ。
    キャスターかなんか付けたりしてサイドテーブルにしたいなぁ。下にゴミ箱を作れば持ち上
    がるからテーブルになるかいな。しかし、それではちょっともったいないか。いや〜出来映
    えが素晴らしいから悩みますね。マジで。

     で、結局レコード棚に納めてしまいました。もったいないけど、全身を見せたいけど、
    ちょっとの間我慢していただくしかない。そのうちステキなゴミ箱が出来たら乗せてあげっ
    からね。ちょい、待っててちょ。

     そうこうしている時、友人から☎。「酵素風呂知ってますか!」と来たもんだ。この人い
    つも緊急口調での電話でよく聞き取れない。やりとりがあって酵素だとわかり、要するに風
    呂桶を作れないかということなんだ。ヒノキで作れるでしょ、なんて簡単に言ってくれるん
    だ。水じゃなくおがくずみたいなものを入れるから水漏れ康介?の心配はない。とはいって
    も風呂桶でっせ。底はどうするのよ、おがくずの交換はどうするのよ? 欲しがっているの
    は女性実業家、これをビジネスにしたいらしい。電話口の向こうでその女性がケラケラ笑っ
    てる。この声からすると40代か。ま、お金はともかく面白そうだから話しだけでも聞きま
    しょうと電話を切る。けど、多分再度の電話はないだろう。世の中そんなもんだ。

     そして昨日、これまた別の友人から画像が送られて来た。それが、これ
     メール添付だけど文面は「どうよ!」の一言。挑戦状だな、これは。海外から送られてき
    たドデカイ箱。問題は中身じゃなく梱包材のベニヤ。これが厚いらしい。捨てるには惜しい
    と数人に連絡をとったけど、デカイから使い道がないから、どなた様もギブアップ。で、私
    にお鉢が回って来た。う〜む、とにかく欲しい。くれ!と即断。そういうからには目論みは
    ある。地下のオフィス&試聴室&ライブ会場の床と壁をこのベニヤで囲っちまおう、と考え
    たのだ。音響空間ならば今のコンクリ壁よりも板のほうがいいに決まってる。しかも、ベニ
    ヤならばプッシュピンも使えるしネジでなんでも取り付けられる。床だってこれを敷き詰め
    れば今の使い古しのカーペットよりも数段良くなるってもんだ。善は急げ、来週早々に実物
    検分に行く事を決める。

    平々凡々なれど血圧高し、ドナイショ〜・・・・・・・・・な、店主でした。


    奢侈品 vs 必需品

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        以前、大阪のタイガー コペンハーゲンを訪れたことを記事にしました。その後、ずいぶん
      経ってから、置いてある商品すべてのほとんどが必需品ではないことに気付いた店主。おや
      おや相変わらず・・・・・・遅いんであります。アッチの方は早いのに。と、どうして品下
      がる言葉しか浮かばんのだろう。しかも、そう言われたからといっても返すことも出来ない
      情けなさ。まごうことなき事実ですからね。んでもっての、必需品。いわゆる生活のために
      必要なモノ達ということで世間の意見は一致するだろうけど。さらに上位には生存の文字が
      くっつく、生存必需品が鎮座する。

       生存必需品。なんか凄みがありまんな〜。水とか酸素とか食べ物とかなんかでしょう。
      その下位に存在するのが生活必需品。昔、三種の神器といわれた冷蔵庫、洗濯機、TVあた
      り。今じゃパソコンも仲間入りで、先輩格には掃除機に寝具や住まいや家具なんかが胸を
      張ってたりするけど。さらに見下ろされるように実用品たちがうようよいるってこと。文具
      とかコップとかセロテープとか、どなたさまの部屋だってちょっと見回せばいくらだって目
      にすることができます。以上、なんらかの生活に必要とされるモノ達は言って見れば守旧派
      みたいなもんでさ、現代の前衛はなんたって奢侈(しゃし)品でしょう。昔は贅沢品とも言
      われ、ねたみそねみの目で見られ税金だってガッチリと掛けられていたもんね。それがもっ
      と軽便軽量庶民化して、いつの間にか、名前も「雑貨」と変え今や全盛の勢い。

       そこで、生活奢侈品をどう理解すればいいのかってことなんだ。実用品や必需品ならば性
      能アップ便利さアップみたいなことを考えればよかったのだろうけど、奢侈品はそうはゆき
      ませんよ。一皮むけば、なくても困らない、もっと言っちゃえば必要とされていないとも言
      えるモノなんだからさ。いまやモノは世の中にあふれかえっていますもん。すでにあるもの
      を手を替え品を替えあれこれやってるわけだ。生活必需品や実用品という範疇から逸脱し
      て、垂直の大騒ぎでさ。しかもそれが年々月々日々刻々といった具合に変化のスピードは速
      くなって、ひょっとしたら誰もついてゆけてないんじゃないかって思うほど。果たして、こ
      んな状況は人間にとっていいことなのか?と、そんなこと考えたり口にしてるとすぐに置い
      てけぼりになってしまう恐怖の時代。でもこれは日本だけのこと? タイガー開店時にプ
      レ・オープンをするかしないかで激論を交わしていたけど、タイガーは宣伝広告の類いは行
      わないことを知ってアタシャ軽く仰け反ったのだ。

       このあともダラダラ書き連ねたんだけど、それは3月10日のこと。で、最近BS日テレ「世
      界・神秘の道をゆく アメリカ・ブルースの道 2」を観ていたら音楽も必需品と奢侈品があ
      ることに気付いて記事は急ハンドルを切る。書き散らかしたダラダラはスパッと切り捨てた
      わけ。この番組、2というからには1があるわけなんだが、それは途中からしか観ていない。
      けど、どう考えても2の方が素晴らしい。シカゴからニューオリンズまで南下するんだがデル
      タと呼ばれる最南部はブルース誕生の地だし登場するシンガーの方々がおそろしいほどに魅
      力的なの。いやもうまいったな〜。オレもこういう老人になりたいな〜、私のお手本のよう
      な方々ばかりなんですよ。ギターや唄だって上手い下手じゃなく生まれたときからの音楽が
      身体にしみ込んでいるのがトウシロの私にだってよくわかるんだ。こういう方々が弾き唄う
      ブルースを聴いたらとてもじゃないけど日本人がかっこつけてそれっぽく弾き唄うことなん
      か恥ずかしくて出来ないだろうって思うんだけど。

       1941年にアラン・ローマックスがマディ・ウォーターズを録音している映像が流れる。ア
      ランの父親はジョン、二代にわたって土地土地の音楽を録音し続けたのだけど、私が持って
      いるウディ・ガスリーの録音も確かアランだった。でね、マディの後ろでハーモニカを吹い
      ている方が素晴らしくってビックリ。う〜む、こりゃ凄いぜ。ほんの短い時間だけどアタ
      シャえらく感心したわけだ。こりゃ友人の徹君にコピーせねばなるまい。虐げられた黒人に
      とって音楽(ブルース)は生活必需品だった。それはまったく高橋竹山の三味線と同じこ
      と。国も違うし文化もちがうけど、生活のために欠かすことができないものであったことは
      同じことだからさ。

       でも時が経つにつれて、生活が豊かになるにつれて音楽は必需品から奢侈品と変わる。こ
      れは音楽だけじゃなくあらゆるものに共通するんじゃないの。食べ物だって。カミさんの祖
      母が生きていたときに「お腹に入ってしまえば同じだ」と言っていたことが忘れられない。
      明治生まれで農業一筋の彼女にとって食事は素早く済ませるものエネルギーの源泉になるも
      のであって味わうことはほとんどないのだろう。私が子供だった時だって、母の郷里での夏
      休みはおやつは一種類しかなかった。一斗缶に同じお菓子が買ってあって毎日それだけを食
      べていたんだし。ある日の夕食のおかずがぜ〜んぶナスだったこともあった。そういうもん
      だったし、それに不足を感じた事はなかった。でも、今じゃすっかり変わってしまいカレー
      を三回も続けるとちょっとゲンナリしてしまう私がいる。これが良いことなのか悪い事なの
      かよくわからないけど、どうもなんだか居心地が悪いんです。

       TVで観た地元で敬愛されている老人の唄とエリック・クラプトンを比べてみると存在感も
      魅力も圧倒的に無名の老人に軍配が上がる。私が敬愛してやまないクィーンのフレディでさ
      えも同じ事のような気がする。この老人、対談している口調がもうすでに唄になっとる。も
      う毎日の生活そのものが音楽と渾然一体だから、どこを切っても金太郎飴のようなんだ。ク
      ラプトンやフレディが逆立ちしたってこの域には辿り着けないだろう。それは、もう音楽が
      必需品ではないからか。そういう私だって一応生業のツマミの専門店だって家具のデザイン
      だってとっくに必需品じゃないんだから、レベルの違いは圧倒的だけどクラプトンたちと同
      類なことは明らか。でも、それは広い視野で見てみれば日本人そのものが置かれている状況
      なんじゃないか、とね。偉そうにも思ってしまうわけですばい。

       そんな私が「ゴミ箱」を作ろうとするわけだ。今、なぜゴミ箱なんだという理由は納得し
      ているけど、じゃそれを具体的に進めようとした時の足元はしっかりしているのか?。もち
      ろん奢侈品で溢れかえっている今の時代だからモノの原点に戻るなんてことは出来やしな
      い。それにしても齢64才の私がアメリカ最南部の無名のブルースシンガーと共鳴することが
      できなければ、いまさらゴミ箱を作る意義はないんじゃないか。おちゃらけた私だって一応
      は考えるんですよ、そういうことを。つまり、私自身とゴミ箱を考え作ることがなんらかの
      必需品関係にあればいいのかな? そんな浮ついたなんちゃってな考えはいかにも浅はかな
      のか? わからぬままに、書いているから読む人もワカランのかもしれないさ〜。

      相変わらず、アタマわりいなァ〜・・・・・・・・・な、店主でした。


      どちらが水が甘いのか

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          当ショップがTVで紹介される日が迫ってきた。それほど反応はないだろうというのが店主
        の考えだけど、ディレクターのK野さんは問い合わせはスゴイですよと言うのだ。果たしてど
        ちらの考えが甘いのだろう。さて、軍配はどちらに上がるのだろう・・・・・、か。ずいぶ
        ん前に大阪のよみうり系「大阪ほんわかテレビ」で紹介されたときは関西圏だけだったから
        問い合わせはゼロ。そのことがあったから、今回も大したことはないだろうと目論む店主。
        ツマミという商品そのものが、付けてみようかと気軽に思えるものでもない。これ、いいね
        と思っても引出しや扉などはツマミが付かない方向にまっしぐらだから、使える場所がない
        ときたもんだ。世の中シンプル全盛なにもないのっぺりとした家具の天下だから、出っ張っ
        て邪魔になるツマミや取っ手に心惹かれる方々はごくごく少数派であることはまちがいな
        い。

         この考えが揺らぐ事はない。TVで知ったとしてもわざわざ来店される方はいないだろう。
        そんなことわかってるんだ。今までもそうだったし、これからもきっとそうなるだろう。で
        もね、少ないからこそ来店されるお客様はなかなかの強者揃いで店主の好奇心をくすぐられ
        る方ばかり。ぜひともその流れを乱したくないもんだ。そうはいっても、TVで観たという少
        ないとはいえ万一来店されるお客さんのために一応整理整頓しておくのが礼儀ではなかろう
        か、と、店内の清掃に精を出すってもんだ。まずは、お店の衣替え。大扉の透明板を網戸に
        替えましょう。そろそろ、時期だし。小さい店だけど、奥行きの方が長いから両側の扉は網
        戸になっている。イメージとしては京都の長屋、風が通り抜けて涼しいだろうと。ショップ
        にエアコンはあるけど、地下用だから店内は涼しくなりません、のだ。

         ショップのエアコンは床上30センチほど。地下への階段に沿って冷風が吹き降りる。

         網戸には格子戸と似たような遮蔽効果があります。明るい外から暗い室内はよく見えない
        けど、逆はきわめて良く見える。誰でも知ってる当たり前なことだ。しかし、この扉の構造
        に弱点がある。部材が細いので歪んでしまう。特に透明アクリルをはめると重さで下がって
        しまいます。ちゃんと作り直したいとは思うけど、大きいので組み立てが大変だから取り掛
        かる事ができませぬ。むろん、私が作ったんだけどね。建具なんか作ったことないから、細
        すぎる部材で作ってしまったのさ。だから、細いワイヤーで歪まないように吊ってあるわ
        け。いやだけど、これを外すと思いっきり変形しちゃうから。

         棚の奥の穴開きベニヤは引戸になっていて、開けると網戸になっているから、ここからも
        風は入る。

         店の奥の扉。うっすらと奥に見えるのは我が家の玄関。たしか鎧戸(よろいど)とか言っ
        たかな、この扉。薄板が斜めに取り付けられているので視線を隠す。

         下から見上げると、こうなる。むろん、ここにも網戸。

         四角い空間のショップには、三方向から風が入るようになっている。適度な風さえあれば
        そこそこ涼しいし、タバコを吸ってもなんの問題もないっす。こういう機会でもないと網戸
        に替える事はなかなかできないんです。面倒くさいから。使ったあとしまうときに洗わない
        から、取り付けるときに洗わなくてはならないから、それがおっくうなの。洗うのはけっこ
        うな時間がかかるから。でも、それも終わり、あとは店内をちょちょっと整理して掃除すれ
        ばおわりだけど・・・・・・・・・・・。

         ツマミの専門店として存在しているFACTIO(ファクティオ)。なんだか裏道をとぼとぼ歩
        いているような感じがする。だから、今回のTV放映はこっぱずかしいような妙な気持ちが拭
        えない。石の下でひっそりと生きていたまるまる虫、急に石を持ち上げられて陽の光にさら
        されて一瞬動きが止まってしまうような。しかも、紹介のされ方はまったくのお笑い系だか
        ら、なおさらなんだかな〜感がいっぱい。しかも、私の性格は、お笑いを志向しているから
        なんだかな〜感は複雑なの。こんな複雑な気持ちわかってもらえないんだろうなァ〜〜。

        なんか薄い内容の記事になっちまった・・・・・・・・・・の、店主でした。


        ひょんなことで円生師匠と

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            京都の金物卸・河長商店のY田さんから頼まれていた取っ手の取り付けに行ってきたんだわ
          さ。タンスの取っ手を24個購入した東京のお客様なんだけど、ネジ間隔を間違えて取り付け
          不能。おっとり刀で私が参上。それが、なんと落語家さんで。うーむ、面白そうだわい。お
          金なんかいらないわい。伺う日を電話でやりとりしたんだけど、電話口の話しっぷりは落語
          家そのものだから、聞いているだけでウレシイ店主。

           実際の高座を聴きにいったことはないけど、子供のころからラジオやテレビで落語は聴い
          ていた。昭和の名人がうようよいる中で、私が最ものめりこんだのは三遊亭円生。端正でメ
          リハリのきいた口調と話しによっては凄みも感じる語り口に心酔したもんだ。しかもとって
          もリアルだからさ、江戸時代に生きていないことは確かなんだけど、まるで眼前に再現され
          ているようで引きずり込まれてしまう。時代小説の藤沢周平と甲乙つけがたいときたもん
          だ。その円生が亡くなってから私の落語熱は一気に醒めてしまい、今に至るということ。そ
          んな、落語家の世界にいささかでも浸れる機会なんかそうそうあるもんじゃないから、喜び
          勇んでシトロエン映子を駆って行ったのだ。

           落語の世界に浸れる歓びはあるものの、取っ手を付けるという仕事は私の気持ちに影を落
          とす。他人の家に上がり込むことも苦手だし、どんな仕事内容でも現場作業は相変わらず慣
          れる事はない。お邪魔してタンスの部屋に入ったとたん汗が吹き出て来る。直前に食べたイ
          ンドカレーの影響もあるけど、ほとんどは緊張性発汗。しかもタンスは大きく聳えていて、
          いささか圧倒されてしまう。24個の取っ手が付くという事は大きくて立派なタンスだという
          ことは、ちょっと考えりゃすぐわかることなんだけど、自慢じゃないけどそんなこたぁこ
          れっぽっちも考えなかった。しかもですよ、タンスが置いてある部屋は書斎のような稽古部
          屋のような、大きな座卓には大量の本と数枚の写真。その一枚がなんと円生じゃあ〜りませ
          んか。三遊亭円生が型を決めて写っている。私の作業を後ろから見てるんだ。私の緊張に拍
          車がかかる。ちょっと鼻にかかった声で、おいおいそんなもんでいいのかい? なんてね。
          聞こえる気がするんです。いやな感じでっせ、これは。背後霊のようでもあるし。

           二本のボルトで固定されるタイプなんだけど、ボルトの間隔がまったく違うんだ。だから
          古い取っ手を外して、穴を開け直して、取り付ける。ま、言ってみりゃこれだけなんだけど
          立派なタンスだから万一間違ってしまったら取り返しがつかない。慎重に間隔を測り、慎重
          に穴の位置に印をつけて、慎重に穴を開ける。もちろん、タンスに収納されている着物(噺
          家さんだから)を取り出すワケにはゆかないから穴を開ける際の木屑が引出しの中に入らな
          いように、慎重に作業を進めなければならない。穴を開け、取っ手を差し込むと穴に残って
          いる木屑が内側に押し出される。うーむ、そういうことかいの〜。木片で木屑を受けながら
          慎重に排出。の、繰り返しなんだわ。ボルトが長いから差し込んでナットで仮締めして、
          余ったボルトを切断して、防護キャップをはめ込んで。の繰り返しなんだわ。同じ事を繰り
          返すことのせつなさよ。いやまったく。

           途中でお茶どうぞ、なんて言われたけど、そんな場合じゃない。仕事の途中で休憩するな
          んてことは、技術的にも精神的にも余裕があるプロにできること、私にはとてもそんな余裕
          はあるわけがない。だから、希薄な集中力をかき集めて一気に仕上げるしかないのよ。艱難
          辛苦なんじを玉にす、私はなったんだろうか・・・・玉に。なんてことを考えていたワケ
          じゃないんだけど、ドリルの刃がさ折れたのよ、ポッキリと。マジ?! 一瞬いろんなこと
          が走馬灯のように頭を駆け巡る。予備のドリル刃は持っているけど、折れた刃は板の中に埋
          没しとるんだ。内側に5ミリくらいしか頭が見えていない。グ〜、どうやって引き抜こう
          か?? ちっこいペンチは役立たず、ならばと持参のニッパーで指先に最大パワー。回し
          て、テコで引き抜くと、ほんのちょっと動くではありませんか。ウレシイでっせ、この一瞬
          は。大丈夫?かも、という希望の灯火がまぶしいなぁ。結局、無事に引き抜けて(もちろん
          板に傷つけるなんてこたぁありませんぜ)一人泣いてしまった。ウ、ウレシ〜。

           作業開始からおよそ2時間半、ようやく全作業終了。やれやれ、よかった。間違えなかった
          し、きれいな仕上がりだったし、作業時間もまあまあ。さてと、後片付けして、確認してい
          ただいて、帰ろうと思ったらお礼の手拭いとポチ袋を渡されてしまった。いや、そんなつも
          りはないと固辞したんだけど、結局いただいてしまい、まぁお茶でもとか言われてしまい2
          階で世間話。と、そこで実は洋服ダンスの鍵穴が抜けちゃうんだけど、と相談され。見せて
          いただいたのがキーホルダーに付いているタンスの鍵。あんれまぁ、キーホルダーにタンス
          の鍵を付けるんだ! 玄関の鍵とタンスの鍵が仲良く一緒ってかい!! めったにいません
          ぜ、そんな人。強者だわい、この奥様。なんでタンスの鍵と玄関の鍵が一緒なの?って聞い
          たら、泥棒が入った時に少しでも時間を稼ぎたい、焦らせたいということなのダ。一応の理
          屈は通っているけど、いまどき洋服ダンスを開ける泥棒がいるとは到底思えない。そう思い
          ませんか? アタシャ、そう思うんだけど。で、洋服ダンスの前で対応を指示させていただ
          き、またお茶のテーブルに戻り、そろそろ失礼せにゃならんかなと思いつつ話しは咲くん
          だ。

           主人たる噺家さんがヒゲをそらないと、とかなんとか言いつつ席を外して。私は奥様と楽
          しいおしゃべり。しばらくしたらどこからかなにかを叩く音がする。何してるんだろう? 
          私もそう思ったし奥様も口にする。間を置いてさらに音は強く連続するんだ。ずいぶん話し
          込んだし、長居しすぎだと思って「帰ります」と階下に降りたら。なんと噺家さんがトイレ
          に閉じ込められていてさ。扉を叩いていたわけどぇ〜す。うっひょ〜、さすが落語家話題を
          提供するに事欠かない、なんて言ってる場合じゃない。そりゃぁ、もう必死だってことぐら
          い理解出来るからさ。だって、夜の寄席に出かけなきゃならないからね。トイレに閉じ込め
          られていて遅刻したなんてことだ〜れも信じてくれるわきゃない。そりゃ、焦りもするで
          しょうよ。自動ロックしちゃったようで、なんで気が付かないんだと奥さんに怒ってるんだ
          けど、それは無理ってもんでしょ。八つ当たりでしょ。と心で思ったけど、一方で笑いをこ
          らえるのに必死でもある店主。いや、実におもろかった。堪能させていただきましたわい。

          いやはや、トイレの鍵がオチだったとは・・・・・・・・・・・・な、店主でした。


          三助、けっこう

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              永き眠りから覚めてお目見えを果たしたシトロエン映子。一昨日、学校に乗って行き、昨
            日は正妻のFITと交換してお持ち帰り。まずは、身を清めようということで。その前に、カミ
            さんに車を手に入れたことを伝えなければならない。別段、悪い事をしているわけじゃない
            けど、昔の脛の傷があるからどうしても及び腰になる。夜、帰ってきたところで、数名の共
            同保有で車を入手したことを伝える。まるで、蚊に刺されたようなまったく大したことでは
            ないという口ぶりでサラッと話したんだけど、ほとんど興味ないという反応で肩すかし。な
            んだ、気にしていたのはオレだけかい。ふ〜ん、女性問題なら大事件だけど、メカ問題には
            見向きもしないってことかい。ま、なにもないで了解してもらえたことはけっこうなことな
            んだけど、今イチ釈然としないけど、虎の尾を踏む必要もないし、と。

             朝、FITを洗車し映子が待つ稲城に直行。FITを洗車しないとなんだか気が引ける。二台の
            車=二人の女性と同時進行の付き合いをしているようで、これでなかなか気は使う。息子に
            教えられバケツに洗剤を泡立てて洗う様はまったく泡踊りだぜ。無事、到着した映子もFIT同
            様に泡踊り。走行するための修理点検は終わっているけど身体の内外は永年の垢がそこかし
            こにこびりついている。それを三助よろしく隅々くまなく洗い拭き上げる。映子が求めるの
            なら三助けっこう。喜んで背中を流しましょう、脇の下も、前も洗いましょう? 年齢相応
            のシミはあるものの、まっ、こんなもんだろうと屋外三助終了。肌は思いのほかすべすべだ
            ぜ。これでファンデーションはいいだろう。メイクのワックスはいずれ近いうちに。


             灰皿は付いているけど、左ハンドルで右側だから使いにくいことこの上もなし。右手にタ
            バコを挟みつつ同じ手でシフトレバーを動かしているときっとそのうち火傷間違いなし。右
            手はシフトレバー、左手はタバコを受け持つようにするためにはドアに灰皿を付けないとな
            らない。ついでにカップホルダーも。オートバックスで買いましたわい。

             身体ふきふきが終わり、室内もキレイなタオルでシャンとなった。ガラスも拭いたし、香
            水代わりの消臭剤もマキマキしたから、どんなパーティだってれっきとした淑女として通用
            するだろう。一段落したからフランス女性らしさを紹介しておこうか。

             トレビアンな室内灯なのだ。◯はスポット、長四角はいわゆる室内灯。スポットは一見暗
            く感じるけど前夫・徹ちゃんに言わせると充分使えるとのこと。しかもぐるぐる方向が変わ
            るんだのし。長四角は三段階に固定でき、それぞれ別々の役割を果たす。

             サイドミラーの角度調整。奇妙な形だ。美女のかかとのタコみたいのようでもある。ある
            いはイボか。どっちにしろそういう感じが否めない。けれど惚れた弱味でなんでもよく見え
            て来るから不思議なもんだ。

             で、前から気になっていた前部バンパーをちゃんとしようとしたもんだ。
             針金と木片で仮付けしてあるもののフニャフニャ感全開。しかも下にずれとる。こりゃな
            んとかせにゃあならんばい。右側はすんなりボルトで取り付けられたけど、左側は内側に妙
            な凸があって、これが邪魔してボルトが固定出来ない。触ってみるとかなりグラグラ。つま
            んで動かすと取れそうでとれない虫歯みたい。このプラスチック部品は車体に引っ掛かって
            バンパーが固定される仕掛けなんだけど、右側はすでに欠落してる。だからさ、左も取っ
            ちゃえっ。思い切ってグリグリしたらポロッと。
             経年変化で樹脂が劣化しておりまする。寄る年波には勝てないってことか。ま、虫歯だか
            らいいじゃん。で、この穴に
             4ミリボルトを差し込んで車体のU字欠き込みに締め付けようと試みた。あ〜、長さが足り
            ないんだ!
             長いボルトを探して、ご覧の通り。そして、内側は、
             こうなる。ダブルナットにしてゆるみ止め。これで、一応は大丈夫だろう。まるでスカー
            トの中に手を突っ込んでるみたいだな〜なんて思ってたらナットを締めているペンチが外れ
            て思いっきり人差し指の根元の肉をはさんでしまった。「そんなお下劣ことしないで!!」
            とつねられたような気分。悪くはない。

             さあさ、これでとりあえずはOK。夜、息子が帰ってきてひとしきり車談義。ホントに左ハ
            ンドルなんだ! マニュアルなんだ!! といささか驚きの態。しかも重ステでっせと追い
            打ちをかる店主。どうぞ、運転なすってと言ってもビビっているのがありあり。お若いの、
            おヌシにはまだまだ無理かいのう。当分は横目で見ながらゆきなせえ、てなもんだ。

             乗る機会が増えているので運転にはだいぶ慣れてきた。あわてなければウィンカーだって
            大丈夫。シフトチェンジもスムーズだし、坂道発進だって問題はなくなってきた。で、一夜
            明けた今朝ワックスを掛けたのだ。ほんのちょっとだけ輝きが増したかなという程度だけ
            ど、これが精一杯だからいいのさ。さらにこれも気になっていたトノ・カバー?を修理。
             確かトノ・カバーって呼んだような気がするけど、間違っているかもしれない。後部座席
            の後ろ、荷室の上に取り付けられる。四周が剥がれていたものを、手持ちのボンドで張り付
            けた。はみ出たボンドがちょっとネバネバするけど、まァこんなもんだろう。

             これで現時点で気になるところは補修できたわけで、行くところを探そうじゃないか。で
            も、その前にオートマに慣れている私の左足を鍛えるのが先決かもしれない。クラッチを踏
            んで運転していると左尻が痛くなる。たった数時間でも、あえなく痛みを訴えるのですよ。
            そんならこれを機会に散歩でもすっか。

            なんてね・・・・・・・・・・・・・・・・・な、店主でした。


            METCHA MATCHA 続報

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                現地から工事中の写真が送られてきました。何回か記事にしたおにぎり屋さん in WIEN。
              開店は7月だけどプレ・オープン(メディアを呼んでの宣伝用仮オープン)が6月4日に予定
              されているのであまり時間の余裕はない。お店が完成しても、献立を考えたり、食器を用意
              したり、こまごまとした店内の飾りつけや、制服やサービスの段取りなどやることは山ほど
              あることだろう。しかも、店主の真理さんは臨月。出産のことやその後の育児のことも同時
              に考えなければならない。そのストレスたるや、いやもう大変なのであります。

               おにぎりと抹茶の店だけど、ギャラリーも併設しています。この白い壁がギャラリース
              ペース。左側はガラスで出入口の扉が設置されている。多分。

               柱を組んでインテリアに使うのだろう。うーむ、朱色の柱かい。鳥居かな? 三本は全部
              朱色だけど、他は全部塗るわけではなさそうだ。下に置いてある部材は未塗装だし。うー
              む、いいんでないかい。全部塗らないところがね。ぐっと日本的だけど、デザインするのは
              ダンナのクリスだから和洋折衷のようなモノになるのだろう。床にはシートが張ってあるけ
              ど、何色になるのか?

               これが店内のようだ。うーむ「あおによし ならのみやこにさくはなは 匂うがごとく いま
              さかりなり」でっか。深い緑は青、柱は丹色。そこですか。なるほど。でも、なぜクリスが
              奈良の古代色を知っているんだ? 私が教えた覚えはないぞ。彼は奈良にも行ったことがあ
              るから、そこで見たものか。同系色の草色との組み合わせはモダンで軽快。こういうところ
              が私には新鮮でウレシイなぁ。それにしてもこの配色はうらやましい。クリス得意の色使い
              だけど、わたしには到底出来得ない世界だ。

               で、昔の画像を引っ張り出してきたもんだ。これは法隆寺の連子窓。これが、外国人の手
              になるとどういうインテリアになるのか。それを見に行くだけでもウィーンを訪れる価値が
              あるというものだ。

               お店の奥には宿泊出来る施設があるということだけど、これがその部屋らしい。狭い部屋
              をイメージしていたけど広いじゃんか。ここにはシャワーとトイレが付いているから、ベッ
              ドを置けばそのままアパートになるってこと。私が手伝いに行った時にはここに泊まること
              が出来るって言ってたけど、下手なホテルよりいいでしゅ。う〜む、期待はふくらむばかり
              じゃのう。

               そんな私だけどただ手をこまねいて写真を見ているわけではない!。なんて、偉そうなん
              だ。おにぎりメニューに是非とも加えたいということで永谷園の「彩りごはん」
               http://www.nagatanien.co.jp/product/lst/2/
              の注文を受け、倉庫兼発送を受け持っているらしい。らしいって? いやその、すでに第一
              便を発送済だから、らしい?ってのは変なんだけど。でも、混乱する言語って好きだから、
              書いてみたかったの。いたしかたなし。一箱に10袋入ってるのを15箱、彩りごはんは5種類
              あるから75箱を、永谷園に電話で発注。対応した女性フタッフは一瞬驚いた様子。なんせ量
              が多いっすから。総額8万数千円ですから。在庫確認のため一旦切ってから後刻電話するとの
              ことだったんだけど、素早く返事の電話。永谷園の電話嬢と在庫管理システムはきわめて優
              秀なことがわかった、ってもんですだ。

               第一便の10箱はすでに発送したけど、残りは当店の天井付近で出番を待つ。えっ、見えな
              い? んならアップで
               これで、どうだ・・・・・・・・なんのこたァ〜ありませんけど。失礼しましたァ〜。

               今まですでに何回かウィーンに荷物を送っている店主。すっかり近所の郵便局員に顔と名
              前を覚えられてしまった。かなり大きな荷物もあったからね。で、今回は10箱づつ8回に分
              けて送るので送料は慎重にならざるを得ない。しかもプレゼントじゃなくてビジネスですか
              ら。事前に郵送料金を聞きに行き資料をいただいたわけ。今までは小包SAL便だったけど、ス
              モール・パケットのSAL便の方が安いと教えられたんだけど、重量の目安が一個2kg。これが
              なかなか厳しい制限で、10袋入りの一箱の箱ごと梱包するとサイズも重量も大きくオーバー
              してしまう。ならばと一箱の箱(わかりにくいなぁ)を捨てて小袋をビニール袋に入れて、
              家にある体重計で量って郵便局に持ち込む。体重計はかなりいい加減な重さしか量れないか
              ら心配はしてたんだけど・・・・・不安的中!!

               あいや〜〜〜〜〜120gオーバーしとるんだ。たった120g、こんな微妙な重さ体重計には
              無理だとは思たんだけど。なんてこったい。オマケしてよ、なんて言えようはずもない。あ
              わてて帰って3袋を抜き取って再梱包。こんどはだいじょうビ、無事発送できましたわい。小
              包SAL便で2kgは3850円、スモール・パケットならば2080円、この差はデカイ。さらにレ
              ジスターという追跡システムを申請すると+410円とられるけど、むろん真理サンと私は不
              要派。今まで一度だって紛失の憂き目にあったことはないから、そんなムダなお金を掛ける
              気持ちはさらさらないのだ。以前、炊飯器を送った時に、内容物の金額を多めに記入したら
              現地の関税事務所で高額な税金を要求されたことがある。私は、てっきり保険のための金額
              だと思っていたんだけど、それは大きな勘違い。記入した金額に対して税金をとられる。で
              も、真理さんは対応した係官に「オーストリア人はひどい人だ!」みたいなことを言った
              ら。後日、タダにしてもらえたとのこと。「オーストリア人も悪い人ばかりじゃない」とか
              なんとかの係官。こういう交渉事には抜群の能力を発揮する真理さん。なんて素晴らしいん
              だ。

               永谷園は海外発送はしていない。海外で日本の食材を必要とするなら現地の輸入取扱い会
              社に頼まなければならない。だけど、急に対応してくれるわけではないから、急遽ファク
              ティオが代理作業を請け負ったわけだ。しかも、オーストリアでは輸入する際に原子力汚染
              がないことを証明しなくてはならないようで、果たして永谷園がそれの対処方をやってくれ
              るかどうか真理さんは心配してたなぁ。あぁ、こんなとこにも福島原発の影響が及んでいる
              のかとちょっと驚いたのですわ。この荷物が届いて、向こうで試食して問題がなければ第二
              便ということになるんだろうか。ようわからんのですけど。

              あれやこれや、ごちゃまぜかい・・・・・・・・・・・・な、店主なんだも〜ん。


              危険思想?

              0
                  学校の近くには世界的にも有名な古本屋街がある。昨日、たまたま通りかかったので一軒
                の店に寄ってみた。店名は忘れたけど文庫本や新書だけしか置いていない、これまた有名な
                店。文庫だから高価な本はない。なんでもいい、なんか買おうかなと思って店内をぐるりと
                回ってめっけたのが河合隼雄。「家族関係を考える」講談社現代新書で400円。表紙の裏を
                めくったら、

                 夫婦の絆は親子の絆と十字に切り結ぶものである。新しい結合は、古いものの切断を要請
                する。若い二人が結ばれるとき、それは当然ながら、それぞれの親子関係の絆を切り離そう
                とするものである。一度切り離された絆は、各人の努力によって新しい絆へとつくりかえて
                行かねばならない。この切断の痛みに耐え、新しい絆の再製への努力をわかち合うことこ
                そ、愛と呼べることではないだろうか。それは多くの人の苦しみと痛みの体験を必要とする
                ものである。このような努力を前提とせず、ただ二人が結ばれたいとのみ願うのは、愛など
                というよりも「のぼせ」とでも呼んでおく方が妥当であろう。他の何事をしてもいいが、
                「愛する二人が結ばれると幸福になる」という危険思想にだけはかぶれないようにして欲し
                い、と願いたくなってくるのである。

                 どひゃ〜! アテが結婚したいと思ったのは「のぼせ」だったんかい。結婚が親子の絆を
                切り離すということなんか思っても見なかったわい。でも、結婚した娘夫婦を見てみればこ
                のことは明らかでズシリとこの言葉が重くのしかかるってもんだ。モテなかった私はこれを
                逃すと結婚出来ないという恐怖感から押しに押したわけなんだけど、だから、一緒に生活す
                るコト以外なんにも考えていなかった。なんということなんだ、そんな危険な思想で突き進
                んだのか。でも、そこそこうまく行ってるってのは、新しい絆の再製に精を出したからなの
                か? そんなこと、まったく思い当たらないぞ。カミさんは努力したんだろうか? わから
                ないことだらけだけど、書かれていることはなんだかブルドーザーのように私を押しまく
                り、気が付けば後ろに崖がせまって・・・・・・・・なんてことは、ないけどさ。

                 前から一目も二目もおいていた河合隼雄さんですから、この本も著者だけで手に取り表紙
                裏を見て即購入。読みやすいし分かりやすいし、やはり私の目に狂いはなかった。いや、
                まったく。親子、夫婦、父と息子、母と娘、きょうだい、老人と家族にまつわる広範囲な内
                容はきわめて説得力があるから困ったもんだ。特に、私が今、今後、真っただ中に突入しつ
                つある、するであろう老人については「二つの太陽」という一文が心に突き刺さる。

                 それはつまりこういうことだ。64才の私はすでに老人であり、太陽に例えれば夕日という
                ことになるけど、恋を夢見たりするってことは一般的には若さ=昇る朝日みたいなもんで心
                の中に二つの太陽が存在することになり、それはずいぶんと苦しいことと思う人もいる。場
                合によっては抑うつ症になったりもするらしい。恋を夢見るだけじゃなく、我慢を強いられ
                ていた主婦が自由な生活を夢見ることもあるなんてこともあるわけ。でも、どう考えたって
                私がそんな苦しさを抱えるなんて実感さらさらないし、何かを発症するなんて予感や不安な
                んかぜんぜんないの。これは一体どういうことなんだろう。二つの太陽が矛盾もなく存在で
                きるってことがわからない。河合さんは、この苦しみから脱するには、上昇する太陽の生活
                をある程度することによって、二つの太陽を一つにまとめ、つづいて下降へと向かってゆく
                ことになるという、この仕事はなかなかのことであったと述べている。そうかな〜、私には
                カンタンな仕事のように思えるんだけど。

                 それはそれとして、私にとって心の中に「二つの太陽」があるという発想がひどく新鮮で
                心に残ったわけ。精神的な問題をムズカシイ言葉を用いずに誰でもわかるように説明出来る
                能力は大したもんだと思ってしまいます。この二つの太陽説には続きがあって、

                 今、老人となっている女性たちは一般に自分を殺すことを美徳として成長してきた人達で
                ある。ところが、老人になってから、自我を確立するような青年の生き方が可能であること
                を知るのだから、大変なことになるのである。実のところ、男性たちも、日本の男性は別に
                それほどの自我の確立などもしていないのだが、人生のそれまでの生活に疲れ果てて、今さ
                ら二つの太陽を夢見るだけの剰余エネルギーを持たないというのが実情であろう。二つの太
                陽の存在を知った人は、その葛藤に直面してゆくことにより成熟への道をたどることができ
                る。しかし、老人になってから、上昇する太陽にのみ同一化した人はどうなるのだろうか?

                 う〜む、深いぜ。二つの太陽は、自分が下降する太陽であることを自覚している場合にお
                いてのみ無理なく存在出来るのか。そうすっと上昇する太陽は、下降する太陽の添加物か
                い?って茶々を入れたくなる店主。イカンのかイカンでないのかよくわらん。

                 さらに「老人と家族」の章で、こうも述べている。
                 はじめて外国旅行される人は、行く前に、いろいろとその地について想いをめぐらされる
                ことであろう。あるいは、彼の地についていろいろ知識を集めたりもされるであろう。そこ
                には豊かなイマジネーションがはたらいて、旅行のへの期待を高めてくれるだろう。時に
                は、そこに大きい不安がはたらくこともあろう。ともあれ、将来の事に関してイマジネー
                ションをはたらかせるのは人間の楽しみのひとつである。
                 ところで、現代人は彼らが最後に旅立ってゆかねばならない世界に対してイマジネーショ
                ンをはたらかせることを、あまりにも怠っているのではなかろうか。スイスの精神療法家ユ
                ングは「人は死後の生命の考えを形づくる上において、それについての何らかのイメージを
                創り出す上においてーーーー最善をつくしたということができるべきである。そのようなこ
                とをしたことがないのはたいへんな損失である。」(「ユング自伝」2)と述べている。確か
                にそれは「たいへんな損失」であると思われる。折角旅行にゆくのに目的地についてからの
                ことを何も考えずにゆくなど、まったく馬鹿げたことである。とは言っても、死後の世界に
                ついて想いをめぐらすことなどは、われわれの意識の論理に従うかぎり、それこそ馬鹿げた
                ことだと思われる。しかし、先にあげた中学生の例のように、それは、われわれのこの世で
                の生き方に豊かな裏打ちを与えてくれるものである。

                 おゥ、おおゥゥ〜〜〜〜〜〜。スゴイ視点でっせ。これは。そりゃ確かに死出の旅という
                くらいだから旅行に違いはないけど。確かに、旅行にはガイドブックが欠かせない人もい
                る、けど。それにしたって死後の世界をイメージしろってことムズカシイんでないかい。で
                も、言われ見ればその通りで、まったく奇妙な心持ちになってしまいます。同じようなこと
                を20世紀最大の哲学者ハイデガーも言ってたけど、あっちは現存在(人間のこと)とか被投
                とか企投とかムズカシイ言葉が満載でどうにも歯が立たない。だけど、こっちは旅行という
                誰でも知ってる例でいともカンタンに説明しちゃってる。この違いはデカイのと違いまっ
                か。これ以外でも河合さんは難解なことばをまったく使わないし、断定することばもまった
                く使いません。それでも、内容は充分な厚みがあり説得に重みがある。この一文を読むと死
                ぬことも楽しそうだなんて思えてきてしまう。ホント不思議な文体でスバラシイの一語。

                だからさ、いつか死ぬんだから楽しく行こうぜ・・・・・・・・な、店主なの。


                シトロエン 映子

                0
                   ひょんなことからシトロエン再生プロジェクトに舵を切ったのが去年の12月18日
                    http://blog.factio-tokyo.com/?eid=121 

                   知り合いのツテで辿り着いた工場に曵かれていったのが、同年暮れも押し迫った27日
                    http://blog.factio-tokyo.com/?eid=125

                   今週、再生完了の知らせを受けて、取る物も取り敢えず引き取りに行ったのが昨日の朝
                  9:00。同行するは所有者だったT野井氏。彼が運転して駐車場になるサンダンスさんのとこ
                  ろまで行き、昼食のラーメンを食べにいった帰りに私が駅まで運転して。我々は電車で、サ
                  ンダンスさんたちは車で、それぞれ帰路に着いたわけ。

                   下車駅を間違えた店主、近隣の駅からトボトボ歩いて・・・迎えるT野井氏。これじゃぁ、
                  まるで悪さをして立たされている高校生のようでっせ。左が再生を引き受けてくれた名店・
                  白興自動車。この道路は、学校への行き帰りに必ず通る第二京浜国道。

                   早速2階の事務所で最終手続き。いつもニコニコ現金払い、残金を払い書類の説明を受け
                  る私の真っ正面にあるドアには二つの取っ手。説明を聞いていても気になって上の空なんで
                  す。で、ぜ〜んぶ終わった時に「失礼ですが・・・・・あの取っ手は?」と聞いたわけ。
                   下の取っ手が元々のもの、上の取っ手は後付け。下の取っ手はすでにガタガタ鍵もかから
                  ない。完全に壊れているんだ。だけど、それを取っ払っちゃうと大きな穴が開いちゃうから
                  そのままで。知り合いに上を付けてもらったとのこと。ま、聞けば当たり前の理由なんだけ
                  ど上の取っ手が微妙な位置にあるから、なんかあるのかな? と店主の妄想はくすぐられ
                  る。

                   まずは、前夫の友人が運転しサンダンスさんの工場に向かいます。重ステ、左ハンドル、
                  マニュアルの三重苦体験をいきなりなんてことは出来やしない。危なすぎまっせ。助手席で
                  慣れてからの初運転で、少しでもリスクを回避しようってことなんだけど・・・・・・?

                   これから幾年月付き合うかわからねども、長き眠りから覚めた姫(AXは女性だと私は決め
                  たんだ。だって私が乗るからね。品下がって申し訳なしだけど、あァ言いたい気持ちを抑え
                  られない)A子とでも呼ぼうか(少女Aなんて歌もあったけど、このAXはすでに少女ではない
                  だろう)。エ〜子、英子、映子、瑛子、詠子、栄枯。栄枯は悲しすぎる、瑛子は理知的な感
                  じだし・・・・・・私の感じでは映子か。シトロエン映子。いいじゃないんすか、これ。フ
                  ランス帰りの帰国子女。もちろん仏語ペラペラだけど無口だからな。ため息のような吐息の
                  ようなう、ときには歓喜のうめきのような声しか出さないから・・・・・・・・・・なにを
                  考えてるのかよくわかんない。

                   何も言わずにどこにでも付いて来てくれるし、どんなに長いデートだって文句一つ言う訳
                  じゃない。極めて従順にして、感情をあらわにすることもなく。唯一、心配なのは突発的な
                  発作。決して若くはないから、持病のひとつやふたつは持っている。持病が発作マグナとし
                  て噴出されれば、私は立ち往生するだろう。それが、街中ならば救急対応はできるけど、人
                  里離れた辺鄙の地であるなら打つ手は限られる。そのことだけが、心配なのだ。

                   もちろん、シトロエン映子は私だけとの逢い引きで充分満足なのだろう。しかし、心の底
                  ではあなたの友達ならばみんなで一緒のデートでもいいわよ、と思ってるらしい。だから、
                  私は時には友人を誘うつもりなんだ。けど、みんな忙しそうだからそうそう声を掛けるのが
                  憚られる。ということで、映子との逢い引き用に新しく同伴を得ねばならない。と、運転す
                  る前までは考えていたりして。でもいざ運転してみたら、別に同乗者の必要なんかないじゃ
                  ん。だって、一人で運転していたって充分愉しいんだからさ。

                   とはいえ、私と映子のデートの道連れ同伴の大筋を書いておきたい。一応、こんなことを
                  考えたわけってことをね。私は映子との同伴として集まりを「有閑クラブ」と名付けた。最
                  初は隠密クラブと名付けたんだけど、ちょっと怪しすぎるかと思い。トイレの中でふと思い
                  付いた有閑クラブ。これも充分怪しいけどさ。でもいいじゃないっすか。このクラブは原則
                  としてシトロエン-AXが中心にあり、時には洗車したり(まさかね)ワックス掛けしたり(あ
                  り得んことです)、そしてどこかに行くこと。車検が取れた今、最低2年は楽しめるわけ
                  だ。残り少ない私の人生にとってこの2年はデカイでっせ。幕が降りればそれっきりの短い
                  人生なんだから、今を愉しむことに知恵を絞らないとね。イカンでしょ。ということで、こ
                  のクラブは私と映子の心の中だけにあるもので、格別な呼びかけ運動はしないの。ふとした
                  機会かなんかで話しが出てさ、それ面白そう!なんて方が出たら・・・・じゃ、どっか行き
                  ますか? みたいなもんでいいんだから。

                   無事、駐車場に到着して一息ついている映子。だんだん良く見えて来るのが不思議。

                   鍵は4個作りました。私、T野井さん、サンダンスさんの3人が自由に運転するためのも
                  の。もう一個は予備。早速、前夫T野井さんによる女体?操作解説。まず、荷室のドアを開け
                  るべく・・・・・これが開閉ノブ。奇妙な四角を右に回すと開く。それにしても不思議な◇
                  だぞなもし。

                   後部背もたれはこのように外せるようになってる。今の車のように倒しても床面はフラッ
                  トにならないから、取り外そうという考えなんだ。見えてる背面はプラスチックではなく鉄
                  です。このことを知ったサンダンスさんは、床面フラット用になにか作りましょうと。多分
                  余ったベニヤかなにかで床面に敷くモノになるんだろう。映子は私一人のものではない、み
                  んなの共有だから(猥せつ感ただよう言い方だけど)良いと思うことはどんどんやっていい
                  んだし。かっちょいいステッカー張ったり、灰皿を付けたり(純正品は小さすぎる)、性能
                  アップ、ドレスアップは大歓迎な店主なんだ。

                   前夫T野井氏は当然この車の操作は熟知している、そしてサンダンスさんも以前外車に乗っ
                  ていたから経験はある、唯一の未経験初体験なのは店主のみ。ということでラーメン食べに
                  行った帰りに運転したわけですけど。右左が逆転しているから頭は混乱し、操作がぎこちな
                  くなってしまう。特にウィンカーとワイパーの位置が逆なので曲がるたんびにワイパーが意
                  味もなく動いてしまう。助手席のT野井氏には、右に寄ってるよ!と注意の言葉が飛ぶんだ。
                  まるで教習所の教官のようで、恐いことこのうえもない。決して、教官口調ではなく優しく
                  注意なんだけど、頭グルグルの店主はそれが叱責のように感ぜられるのだ。

                   家に帰ったらものすごく疲れていてTVを観ながら寝てしまいましたわい。その前のTV撮影
                  といいこの試運転といい、久しぶりの緊張体験が続いたもんだからフニャフニャな私の頭は
                  疲労に耐えかねて悲鳴をあげている。運転してこんなに疲れたことはないでっせ。まった
                  く。これからが思いやられるってもんだけど、私の潜在能力がどんだけのもんだか、が試さ
                  れる絶好の機会、老人ボケが早いか運転に慣れるのが早いか・・・・・まずは、お試しごろ
                  うじろってことで、イインデナイカイ。

                   車は来た。あとは、これをどう楽しむかってこと。そこで、別表のカレンダー。メンバー
                  は、私にメールで使用申請し、私がカレンダーに記入し、それを確認して使用申請するため
                  のもの。ですから、メンバー以外の読者にはまったく無用のものでございます。ご理解のほ
                  どよしなに願い奉る。

                  ではでは・・・・・・・・・・・・・・・な、店主でした。 


                  ぼんち倶楽部 五月号

                  0
                     江戸っ子は 五月の空の 鯉のぼり・・・・口先ばかりで 腸(はらわた)は なし。

                     寒い日もあるけど、おおむね夏に向かっているのはご同慶の至り。なんせ、夏大好きです
                    から。寒さで厚着になって動きは悪くなり身体の血流も悪くなってくるようで苦手な冬。そ
                    れから開放される心地よさなんてものは、まったく格別のことです。で、この映画鑑賞・ぼ
                    んち倶楽部。ゴールデンウィークは私にはなんのカンケーもないんだけどTV取材でバタバタ
                    してしまって第一週はお休み。今週からってことに相成りました。といっても明日だから連
                    絡は遅すぎるんだけど。

                     昨日は一年生の最初の授業だったんだけど、卒業生の美嬢?二名がわざわざ学校まで遊び
                    に来てくれました。せっかくだからってことで、夕飯をご馳走してあげよう。行きつけの中
                    目黒・バランチェッタ。この二人は共に22才、片方は最近彼氏が出来て処女よさらば組、も
                    う一方はいまだ彼氏不在の完全無欠な処女組。と、こう書いても怒るような方々ではない。
                    私のエロトークを充分受けて立てる資質の持ち主なんだ。待ち合わせたに遅れた二人、私が
                    読んでいた「ドキュメント 綾さん」に興味を持ち、「トルコに働きながら一所懸命に生きて
                    きた綾さんの半生記」のトルコって何?と私に問うんだ。ひょっとして知らんのかいな? 
                    予感的中で、「国ですか?」なんてトボケたことをのたまわうんだわ。やっぱね、若いから
                    知らないのもムリはない。私が答えてもいいんだけど、それじゃ能がない。レストランの
                    オーナーに聞いてみなと言いながら店に到着し。入る早々、開口一番「トルコってなんです
                    か?」とけっこうな大声で。知らないことは強いというか恐いというか。

                     日頃、エロな話は封印され、私の小さな心は爆裂のとき今や遅しな状態だったから、好機
                    来れりとばかりに3人の話題は恋愛からエロまで存分に語り合う。いや〜、久々にスカッと
                    しましたわい。これでなきゃいけませんよ。極上の会話を楽しみながらの食べたり飲んだり
                    は至福の一時です。話しはエロだけじゃなく、仕事のこと、恋愛のこと多岐にわたるけど、
                    いつのまにかエロに戻ってしまうんだ。言っておくけどそれは私のせいばかりではない。ア
                    ンダーヘアを剃る派のK嬢は処女であるにもかかわらずエロ話にひるむことは一切ない。実に
                    見上げた根性の持ち主でアタシャ大好きなんだけど。一体どこまで剃るの? 上の飾り毛
                    (これには笑った)はわかるんだけど、割れ目のところは? なんていうきわどい部分に話
                    しが及んでも懇切丁寧にご教示くださる。さらに剃ることの効用まで。なんて素晴らしいん
                    だ。近時、こういうキャラクターはめったにいませんぜ。私が若くて未婚なら結婚相手の候
                    補No.1であることはまちがいない!!

                     バカ話しで気が付けば11時をはるかに過ぎている。およそ5時間、トイレに行く間も惜し
                    んで、ひとときも休まず話し続けるひとときを持てたことは大きな歓びでありました。

                     前月は若松孝二の「17歳の風景」を観た。母親を金属バットで殺害した後、主人公が自転
                    車で逃げるシーンの連続。もう終わるだろうと思って・・・・・も、まだまだ続くよ、どこ
                    までも。結局、最後までほぼ自転車に乗るだけの映画だった。全編、思い出したように流れ
                    る歌は聞き覚えがある。ゼツゼツ、ボーボー、ゼツ、ボーボー。絶望の単語を刻んで歌って
                    いることはわかるけど、これが暗いし叫ぶし。どーにもこーにも、ようよう観終わりまし
                    た。歌手は友川カズキ。いや〜、まいりました。若松ワールドにどっぷり浸かりましたわ
                    い。今でも、ゼツゼツ、ボーボー、ゼツ、ボーボーが耳から離れないし、ふと口ずさんだり
                    するんだ。どうしてくれるんや。

                     そして久しぶりな「バベットの晩餐会」。再観しても相変わらず不思議な映画なの。なん
                    だろう、これは。物語はわかりやすいから難解な映画ではない。極限の生活環境の村人に
                    降って湧いたような豪華な晩餐会が催される。革命のパリから亡命した名シェフが宝くじに
                    当たり、賞金全部をこの一夜に注ぎ込む。でも「口は祈りのためにあるもの」だから、決し
                    て「味わってはいけない」と信心深い村人たちは誓うんだけど、美味しさは誰だって理解出
                    来るから舌なめずりなんかしちゃう。最後は井戸の回りで踊るんだけど、なんか宗教儀式の
                    ようでもあり、不思議な感覚が残る。こりゃ、時をおいてもう一回観ないとならんな〜。な
                    かなか本質(なんて大袈裟ななことだけどさ)が理解出来ない居心地の悪さが気になってし
                    まいます。こういう映画はあまりハリウッドにはないだろう。商業映画としては成り立たな
                    ければならないのがアメリカの特質だと思うけど。なんせ素人だから上っすベリした考えか
                    もしれないけど。

                     着々と毎週一本の映画を観続けている。灰の中に埋もれていたかすかな種火が再び熾きて
                    しまったから、当分の間は続けるつもり。気が向いたら、お気軽にどうぞ。

                    5月  11日(土)午後7時〜 「夜の鼓」 1858年 松竹 白黒スタンダード 95分
                                  監督 今井正  脚本 橋本忍、新藤兼人
                                  出演 三國連太郎、有馬稲子、森雅之

                     三國連太郎追悼上映ってわけじゃないけど、気になっていたから早速オークションで入手
                    し、早速観ようと。近松門左衛門が原作で、橋本、新藤ご両人が脚本、三國、有馬、森が出
                    演するとあっちゃあ、期待を裏切られることはないだろう。三國さん本人も「今井さんの作
                    品の中でも最高傑作!」だと書いてるし、小林信彦は「怪優伝」で、こう述べている。

                     近松が書いた「堀川波の鼓」には、男と女、夫と妻をめぐる永遠の難題と疑問がこめられ
                    ている。だからこそこの作品は,浄瑠璃や歌舞伎で繰り返し演じられてきた。だが「夜の
                    鼓」は、浄瑠璃や歌舞伎といった古典芸能ほどには観客を動員できなかった。これは、大衆
                    芸能といわれる映画の限界性をいみじくも物語っている。「夜の鼓」が公開された昭和三十
                    三年は、日本が高度成長に向かって駆け足で上り始めた年である。日本じゅうが伝統的な
                    エートスを過去の遺物として押し流し、日本列島が経済一辺倒に洗礼されるのも、この時代
                    からである。
                     「夜の鼓」は、いまもまったく古びていない。逆に、価値観が混迷したいまこそ観るべき
                    作品である。三國はこの作品をなぜ自選して、後世に残そうとしたのか。その理由について
                    思いをめぐらせてもらうためにも、そして日本の戦後史を振り返るためにも、ぜひこの作品
                    をじっくり観ていただきたい。



                    5月18日(土)午後7時〜 「ナッシュビル」 1976年 アメリカ カラー 160分
                                  監督 ロバート・アルトマン
                                  出演 ヘンリー・ギブソン、ロニー・ブレイクリー

                      アメリカ、テネシー州のナッシュビルはカントリー&ウェスタン音楽のメッカである。こ
                    こを舞台に24人の登場人物が織りなす人間ドラマ。むろん、音楽が中心なんだろう。キー
                    ス・キャラダインが歌う「アイム・イージー」はアカデミー最優秀集歌曲賞を受賞したぐら
                    いだから。例によって双葉十三郎の「ぼくの採点表」では75点、「アルトマン作品中の最高
                    とぼくは思うね」と述べている。とはいえ、この映画は51歳の作品だし、これ以降も多くの
                    映画を撮り続けていたわけだから、あくまでも「この時点」での最高ということ。それにし
                    ても、未見で素晴らしい映画が山ほどあるもんだ。今さらながらちっぽけで浅学な己を再確
                    認する。なにも知らないくせにあれこれ言うのは控えようって、殊勝な気持ちになるけど、
                    そこはそれってことでね。なんのこっちゃ?



                    5月25日(土)午後7時〜 「卒業」 1968年 アメリカ カラー 101分
                                  監督 マイク・ニコルズ
                                  出演 ダスティン・ホフマン、アン・バンクロフト

                     結婚前に観たから40年も前ってことかい。ラストで花嫁を連れ去るシーンを淀川長治さん
                    が「ハリウッドの定番シーンだからげんなりしちゃった」みたいなことを言ってたなぁ。な
                    にも知らない店主は、そのシーンで感激したりしてたからさ、ちょっと驚いたりしたことが
                    思い出される。浮気相手のアン・バンクロフトは「奇跡の人」でヘレン・ケラーの教師役で
                    頑張ってたけど。ちなみにダンナは喜劇映画で有名なメル・ブルックス。へえ〜、ってなも
                    んだす。ダスティン・ホフマンはこれが出世作だったように記憶してる。アメリカン・
                    ニューシネマと呼ばれていた一連の映画に含まれているとの世評だけど、特典映像を観ると
                    そのことがよくわかる。なるほど、そ〜いうことと。遅かりしユラノスケなんだからさ〜、
                    もう。


                    昨晩の余韻に浸る・・・・・・・・・・・な、店主ですわい。


                    役者修行ってか

                    0
                        先週、珍しくショップの電話が鳴ったもんだ。めったにない問い合わせか? と思いき
                      や、TV番組に出演の交渉で。以前にも「大阪ほんわかテレビ」に取り上げられたことがある
                      から、驚きはしないけど、長くやってればいろんなことがあるもんだと感慨にふけりつつAD
                      のS君と話し込むこと、およそ30分。委細承知、断る理由はないけれど、あなた方の期待に
                      沿えるかどうか、まずはお店を見て下さいなと。お店を見ていただき、番組の素材として適
                      していると判断されたなら喜んで協力いたしましょう。なんてことで電話を切ったわけ。

                       数日を経ずしてディレクターのK野さん来訪。番組の主旨を説明していただき、店内、地下
                      を見ながら彼の頭はフル回転してる様子がアリアリ。それぞれのシーンを即決しつつ、その
                      場で番組の構成を考えているのだ。なんといっても時間がない、撮影は翌週に迫っているか
                      ら彼はこのひとときですべての構成を考えなければならないのだ。だから、店主の私にも容
                      赦のない的確な指示が飛ぶんだけど、これがなかなか気持ちいいのっす。素早い決断と理に
                      叶った指示はK野さんの実力が伺えるし、なによりもグダグダあやふやでないところが私を奮
                      い立たせる。こりゃ〜負けてはいられない、彼の期待を裏切るわけにはゆきませぬ。もっと
                      オリジナルのツマミを増やさなきゃアカン。ってことで長年温めていたツマミのアイデアを
                      次々と実現化、私の頭もツマミ制作のアイデアでフル回転なんだ。

                       番組でFACTIOを紹介されることで売り上げ向上が見込めることにはあまり興味はない。ど
                      のような紹介をされようとツマミ欲しさに当店を訪れるお客様はきわめて少ないだろう。そ
                      の考えを裏切って多数の来店客があったとしても、バックオーダーを抱えて製作に専念する
                      ことなんか絶対に出来ない(同じものを多数作ることは私にとって拷問のようなものだか
                      ら)。また、注文があったとしても薄利ですからね。この三段構えの考えが私を「どうせ儲
                      かることなんかないぞい」という大船に乗せる。ということで、私の心はもっぱら、撮影に
                      まつわるあれこれとかK野さんとの仕事の応酬合戦に傾くのです。

                       以前と同じように盛り上げるためのネタとしてツマミになりそうもないモノが用意され
                      て、それらをツマミに加工せねばならない。ADのS君から渡されたのが前日の夜で急遽その
                      日のうちにすべての加工終了。なんせ相手がK野さんですから、迅速に即断即決でなければイ
                      カンのですわい。負けてはいられませんからね。こんな私でもそれくらいの自負?は、あり
                      ぬるをわか。で、昨日が撮影日。朝から出来上がった珍ツマミをディスプレイし、店と地下
                      を清掃し、店前に停めてある愛車を近くのコインパーキングに移動し、ほぼ万全の態勢で待
                      つは武蔵か小次郎か。番組の方針として来店されるゲストはわからない。でもこの手の案内
                      人ゲストはほとんどが男性タレントだから、恋の生まれる可能性はゼロ。気持ちは高まるけ
                      ど、どうってことないレベルだから安気なもんなのでアリマス。

                       これらが私に委託された使命たち。う〜む、相変わらずお笑いやのぅ〜。上右から自転車
                      のベル、アフリカ笛(これは私の物)、ホッチキス、茶こし、物干フック。中段は、灰皿、
                      靴ブラシ、栓抜き、ぐい飲みと・・・・・下段に輝くは蛇口。これ以外にも学生服のボタン
                      とかままごとセットとかミニカーなどが目白押し。私だってこういうのは嫌いじゃないけど
                      撮影時にこれをネタにいじられるんだろうな〜とあらかたの予想はつく。

                       ボケッとしてたらスタッフが到着。早速K野ディレクタ〜がツマミの位置変更の号令のもと
                      あわてて取り外して付け替えるの繰り返し。カメラ映りが良くなるようにの模様替え。朝、
                      友人T野井さんに撮影のことを知らせたら手伝いに馳せ参じてくれて、大助かり。二人掛かり
                      で大忙し。しかも、どうしても蛇口が欲しいという命令が下りアタシャものの数分で加工し
                      て取り付けましたわい。いやいやどーしてやればできる、土壇場のクソ力。で、待つことし
                      ばし。来ますよ! という声に地下で待つ店主。やってきましたゲストは私も知ってるこの
                      番組の常連タレント。心のなかで「あなたでしたか」と思うもののすでにカメラは回ってい
                      て、いきなり始まっているわけなのね。打ち合わせ通りに進行し、ツマミを見ながらよもや
                      ま話に興じつつ、箱の中に話題は移る。ツマミに変身する時を待つガラクタという設定なん
                      だが、私のものとスタッフが用意したものが混在している魔窟にも見える。

                       どう考えたってツマミなんかにはなりそーもない人形とかさ。これらをいじりながらゲス
                      トが取り出したのがコレ! よりによってコレかい!!
                       「これは、どんなツマミになるの?」と、私に迫るんだ。げっ!! 聞いてないぞえ、そ
                      んなこと。「これはツマミにゃムリでしょう」などと、ゲストはさらに私を責め立てる。打
                      ち合わせにもない突然のツッコミに私の頭はクルクルと空回り。なんか言わねばならない。
                      この場合、沈黙は金ではなく単なるゴミにもなり得ない。しょせん素人にゃムリだったかと
                      ディレクターの嘆息が聞こえるようで土俵際つま先立ちの店主。頭とは無関係に口から出ま
                      かせの言葉が自動音声のように次々と出て来るんだ。鋭い矛先をなんとかカワシ、ほっと一
                      息。頭の急速疲労に耐えかねて5分間の一服停戦を申し出る。フー、疲れた。

                       私が用意した新ツマミもあるんだけど、一向に光が当たることはない
                       唯一、松ぼっくりとクルミだけがネタにしてもらえました。うれしいような悲しいよう
                      な、なんといったらえ〜のかい。不思議なココロはひとりぼっちなのさ。

                       一階店内が終わり、地下の試聴室にゆき、最後に奥の工房に辿り着く。この間、ダメ出し
                      は次々で、ひたすら繰り返すことのみオオカリキ。これじゃ、役者修行じゃんかと思わず心
                      でつぶやく。特に階段を降りるシーンでは繰り返すこと五回、しまいにゃなにがなんだかわ
                      からなくなる始末で、私の頭は完全にショートしちまっているのさ。素人の悲しさ、対応で
                      きないんだ。そんな私にディレクターK野氏は容赦なくダメ出しを繰り返す。おっしゃること
                      はよくわかる、理にかなっているからさ、でも肝心の対応力が私にはないんだ。情けないの
                      う〜。

                       全部終わって感じたことは、TVに限らず映像の世界では私の本質なんかとは一切関係なく
                      進むってこと。そりゃ、お笑いは大好きだし、私のいじられ方も決してイヤではないけど奇
                      妙なツマミを作る「いっちゃってる人」みたいに思われちゃうんだろうな〜、に対する「な
                      んだかな〜」感。トンデモナイ品々を持ち込まれて思案投げ首も面白そうだけど、変人奇人
                      ばっかりが大集合みたいになったりしたら、困りはしないけど「なんだかな〜」なんであり
                      ます。とはいえ、すでに賽は投げられたわけだから、心静かに反応を待つっきゃないんだけ
                      どね。

                       結局3時から始まった撮影は8時頃までかかり、撮影見学に訪れた学生二名と友人T氏ととも
                      に地下で休憩した後、隣り駅のきちゃない焼き鳥屋でお疲れさん飲み会で盛り上がる。ま、
                      いい経験だったという結論・・・・・・なんちゃって。番組名と放映日をお尻おっと間違え
                      たお知りになりたい方はHPの問い合わせからどうぞ。ちなみに最初は関東圏で、再放送は全
                      国ネットだということっす。

                      いやもう、テヘッ・・・・・・・・・・・・な、店主でした。
                       


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