一夜明けても
友人の葬儀を終えて一夜明けても、疲れは残っているらしく、一向にやる気
が起きてこない。依頼されている仕事の締め切りも迫りつつ、尻に火が、にも
かかわらず、だ。二度寝して遅い起床、いつもの朝食、珈琲を飲んで地下の
指定席でCD探索に励む。昨日、バランチェッタのスタッフから、店内で流す
BGMの依頼に応えるため。今までのBGMは店主尾崎さんが渋谷で選んで
もらったものを、雰囲気に合わせてテキトーにチョイスしてたんだけど、今の
スタッフはそれができない。25連奏のCDデッキになにが入ってるのかわから
ないし、どれを選んでいいのかわかんない、ましてや音量や曲を変えることも
できない。とにかく、今のCDの内容を一覧にして、こういう時にはこのCD
みたいに、おおよその目安となるものを作らなければならないのダ。
店のすべてのことは尾崎さんのアタマの中にあった、生きていればそれでOK
だけど、亡くなった今、彼のアタマの中にあったものを推し量りつつ整理して
誰でも出来るようにしなければならない。そうすることによって店の雰囲気は
変わってしまうだろうし、混沌とした魅力は失われるだろうけど、それは
いたしかたない。BGMでも同じコトだ。彼の考えを最も理解している者が
彼の考えを受け継いでやってゆかねばならない、その適任者はアタイ以外
いないだろう。そういうと不遜に聞こえるかもしれないけど、バランチェッタ
のあらゆる雑事、営繕を一手に引き受けて来たこれまでの経緯から考えて
みて、妥当なこととアタイは考える。
亡くなる前に、BGMのことを聞かされたことがあった。誰でも知ってる
有名な曲は外して、ヒットチャート中位の曲、あまり知られていない曲、
いわゆる通好みの曲を流していたけど、最近80〜90年代のヒット曲ばかり
を集めたコンピレーションCDを流したら評判が良くて、なんだよ、コイン
の表そのままでいいんじゃん。まともでいいんじゃん。ベタで正解なんだ。
それでお客さんが喜んでもらえるなら居心地がいいのなら、結果売り上げ
向上ならば、それで行こう、そんなことだった。その感じアタイもよく理解
できたから、そんとき大笑いしたんだよな。考えてみりゃ通人がいなくなり
多くのお客様は音楽に親しむ機会は多くない、そんなら誰でも知ってる曲
でいいってことだったワケ。
でも、中には通人はいる。数少ない通人が唸るような曲も必要だろ。
有名な曲ばかりじゃそこらへんのフツ〜の店になっちゃう。怪しげな客で
満席になるのが夢だと聞いた事があったもんな。家族連れ、若いカップル、
女性や男性のグループ、それはそれでいいけど、出来れば年の差甚だしい
カップルとか曰くありげなグループみたいなのがいてくれれば妖しさな
魅力が醸し出され、そんなバランチェッタであってほしいとね。音源も
有線ではなくCDにこだわっていたのもそういうことでね。音楽関係者も
けっこう来るから良い音で聴かせることが重要なコト。そのためには
スピーカーやアンプだってそれなりのクオリティにしてきたからな。
それが矜持ということだろ。
物販店なら商品そのものが入れ替わるから、行くたびの印象を変える
ことができる。一番大変なのは商品を入れ替えてつねに目新しくする
することだと聞いたことがある。でもさ、飲食ではそれが出来ない。
料理や食器はいつも同じだし、インテリアも時々に変える要素は少ない。
花を飾るのはいいけどお金がかかる。そこで額入り写真を入れ替えたり
並べ換えたり、多少なり目新しさの演出で「なにか違ったな」という
印象を与えようと工夫していたとアタイは考えていたんだ。飲食店で
以前来たときと違うなと思わせる要素として音楽もあるだろ。今ある
CDだっていつまでも同じじゃダメ、少しずつ入れ替えないと新鮮さは
失われ、客は離れてゆくかもしれない。
で、入れ替えるにふさわしいCDを手持ちの中から探しているわけ。
日々の客席の雰囲気に合わせてスタッフがCDを選ぶのは当たり前だ。
ホールスタッフは変わる、どの曲を選ぶかはその人のセンスだけど、
誰がどれを選んでも雰囲気が壊れることはないようにするのがアタイ
の役回り。ってことで、まず、昼と夜に分けましょう。昼は有名な曲、
夜はそれに加えて通が納得する曲も加えましょう。スッキリしたのは
ダメ、猥雑で色気がありある程度アップテンポであり時にはしっとり
感も。カップルが多ければそれに合わせ、宴会にも合う、年齢や性別、
服装や会話の内容、それらすべてにマッチするなんてことはムリだけど、
スタッフが選ぶ目安は作れるだろう。
デッキに入るCDは25枚、毎月5枚程度を入れ替えてゆけばイイだろ、
それならおよそ半年でぜんぶ入れ替わることができるもんな、と見当を
つけて。さて、まずは汎用性のあるもの、どんなときでも流せるCDを
選ぼうと、手にしたのは映画「フェティッシュ」サントラ盤、ラテン系
のゴチャゴチャ感歯切れもいいから店の雰囲気は壊さないだろ。次には、
今をときめくマデリン・ペル「Half the perfect world」。しっとり系
だが合うに違いない。夜でも昼でもOK。残る三枚はベタだけどティナ・
ターナー「foreign affair」、キャッチーな曲が目白押しの映画
「メトロポリス」サントラ盤。と、トニー・ベネットとレディ・ガガの
デュエット。有名な曲ばかりだし、年の差も充分だ。カップルが多い時
にゃこれでいいし、そうでないときにも大丈夫な一枚。おまけとして、
ビートルズ。名プロデューサー、ジョージ・マーチンが作った一枚。
できれば追悼供養の一枚もあればと探したけど、そんなものあるわけ
ない。ムリに決まってる、とはいえ諦めちゃいないけど。とにかく
これを持って、今日行くんだ。亡くなった尾崎さんの可能性を未来に
つなごう・・・・・・・なんちて。
はてさて、流してみなけりゃワカラナイ・・・・な、店主でした。
が起きてこない。依頼されている仕事の締め切りも迫りつつ、尻に火が、にも
かかわらず、だ。二度寝して遅い起床、いつもの朝食、珈琲を飲んで地下の
指定席でCD探索に励む。昨日、バランチェッタのスタッフから、店内で流す
BGMの依頼に応えるため。今までのBGMは店主尾崎さんが渋谷で選んで
もらったものを、雰囲気に合わせてテキトーにチョイスしてたんだけど、今の
スタッフはそれができない。25連奏のCDデッキになにが入ってるのかわから
ないし、どれを選んでいいのかわかんない、ましてや音量や曲を変えることも
できない。とにかく、今のCDの内容を一覧にして、こういう時にはこのCD
みたいに、おおよその目安となるものを作らなければならないのダ。
店のすべてのことは尾崎さんのアタマの中にあった、生きていればそれでOK
だけど、亡くなった今、彼のアタマの中にあったものを推し量りつつ整理して
誰でも出来るようにしなければならない。そうすることによって店の雰囲気は
変わってしまうだろうし、混沌とした魅力は失われるだろうけど、それは
いたしかたない。BGMでも同じコトだ。彼の考えを最も理解している者が
彼の考えを受け継いでやってゆかねばならない、その適任者はアタイ以外
いないだろう。そういうと不遜に聞こえるかもしれないけど、バランチェッタ
のあらゆる雑事、営繕を一手に引き受けて来たこれまでの経緯から考えて
みて、妥当なこととアタイは考える。
亡くなる前に、BGMのことを聞かされたことがあった。誰でも知ってる
有名な曲は外して、ヒットチャート中位の曲、あまり知られていない曲、
いわゆる通好みの曲を流していたけど、最近80〜90年代のヒット曲ばかり
を集めたコンピレーションCDを流したら評判が良くて、なんだよ、コイン
の表そのままでいいんじゃん。まともでいいんじゃん。ベタで正解なんだ。
それでお客さんが喜んでもらえるなら居心地がいいのなら、結果売り上げ
向上ならば、それで行こう、そんなことだった。その感じアタイもよく理解
できたから、そんとき大笑いしたんだよな。考えてみりゃ通人がいなくなり
多くのお客様は音楽に親しむ機会は多くない、そんなら誰でも知ってる曲
でいいってことだったワケ。
でも、中には通人はいる。数少ない通人が唸るような曲も必要だろ。
有名な曲ばかりじゃそこらへんのフツ〜の店になっちゃう。怪しげな客で
満席になるのが夢だと聞いた事があったもんな。家族連れ、若いカップル、
女性や男性のグループ、それはそれでいいけど、出来れば年の差甚だしい
カップルとか曰くありげなグループみたいなのがいてくれれば妖しさな
魅力が醸し出され、そんなバランチェッタであってほしいとね。音源も
有線ではなくCDにこだわっていたのもそういうことでね。音楽関係者も
けっこう来るから良い音で聴かせることが重要なコト。そのためには
スピーカーやアンプだってそれなりのクオリティにしてきたからな。
それが矜持ということだろ。
物販店なら商品そのものが入れ替わるから、行くたびの印象を変える
ことができる。一番大変なのは商品を入れ替えてつねに目新しくする
することだと聞いたことがある。でもさ、飲食ではそれが出来ない。
料理や食器はいつも同じだし、インテリアも時々に変える要素は少ない。
花を飾るのはいいけどお金がかかる。そこで額入り写真を入れ替えたり
並べ換えたり、多少なり目新しさの演出で「なにか違ったな」という
印象を与えようと工夫していたとアタイは考えていたんだ。飲食店で
以前来たときと違うなと思わせる要素として音楽もあるだろ。今ある
CDだっていつまでも同じじゃダメ、少しずつ入れ替えないと新鮮さは
失われ、客は離れてゆくかもしれない。
で、入れ替えるにふさわしいCDを手持ちの中から探しているわけ。
日々の客席の雰囲気に合わせてスタッフがCDを選ぶのは当たり前だ。
ホールスタッフは変わる、どの曲を選ぶかはその人のセンスだけど、
誰がどれを選んでも雰囲気が壊れることはないようにするのがアタイ
の役回り。ってことで、まず、昼と夜に分けましょう。昼は有名な曲、
夜はそれに加えて通が納得する曲も加えましょう。スッキリしたのは
ダメ、猥雑で色気がありある程度アップテンポであり時にはしっとり
感も。カップルが多ければそれに合わせ、宴会にも合う、年齢や性別、
服装や会話の内容、それらすべてにマッチするなんてことはムリだけど、
スタッフが選ぶ目安は作れるだろう。
デッキに入るCDは25枚、毎月5枚程度を入れ替えてゆけばイイだろ、
それならおよそ半年でぜんぶ入れ替わることができるもんな、と見当を
つけて。さて、まずは汎用性のあるもの、どんなときでも流せるCDを
選ぼうと、手にしたのは映画「フェティッシュ」サントラ盤、ラテン系
のゴチャゴチャ感歯切れもいいから店の雰囲気は壊さないだろ。次には、
今をときめくマデリン・ペル「Half the perfect world」。しっとり系
だが合うに違いない。夜でも昼でもOK。残る三枚はベタだけどティナ・
ターナー「foreign affair」、キャッチーな曲が目白押しの映画
「メトロポリス」サントラ盤。と、トニー・ベネットとレディ・ガガの
デュエット。有名な曲ばかりだし、年の差も充分だ。カップルが多い時
にゃこれでいいし、そうでないときにも大丈夫な一枚。おまけとして、
ビートルズ。名プロデューサー、ジョージ・マーチンが作った一枚。
できれば追悼供養の一枚もあればと探したけど、そんなものあるわけ
ない。ムリに決まってる、とはいえ諦めちゃいないけど。とにかく
これを持って、今日行くんだ。亡くなった尾崎さんの可能性を未来に
つなごう・・・・・・・なんちて。
はてさて、流してみなけりゃワカラナイ・・・・な、店主でした。
- 2016.03.31 Thursday
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- 13:25
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