彼の地での展覧会

0

     ウィーンへ行って毎日皿洗いじゃつまらんだろ、どっか連れてっちゃろかい。

    Metcha Matcha店主のクリスは思ったんだろう。アートな展示会があるとの

    ことで家族みんなで出掛けたと思ってくんねえ。

     はて、ここはどこ? ウィーン市内であることはわかる。この巨大な建物

    ほとんど丸ごと展示会場。どうやら若手アーティストの作品展らしい。

     ガラーンとした入口の部屋。これも作品なのか? まさか。でも、そう

    思っても不思議じゃない。

     ハイ! こちらへどうぞ。ざっくり描いた人の影

     古い建物そのまんま使ってるからさ、いたるところこんな感じ。真ん中の

    ビニール梱包、まさか作品ではあるまい。クランク折れ曲がり黄黒テープ、

    ここに小さな段差がある用心されたしの目印。

     単なる壁面。「コンポジション2」とでも呼びたい。

     これは作品だろ。部屋の床掘って土砂山積みの図。以前どっかで見た事が

    ある。気持ちはわかるけど・・・・・・・。

     廊下に放置された、これは作品か? 黒テープ張ってあるもんな、明らかに

    作為的だもんな。

     トイレへの通路の角にこんなもの。ボトルに穴が・・・・・・・。

     

     この展覧会は、PARALLEL VIENNA 2016。毎年開催されているんだろ。

    相変わらず多様な客層?だし、出品者も様々だ。ここを登竜門にしたい人、

    好きで作った作品を観て欲しいだけの人、ほんの気まぐれで出品しちゃった

    なんて人もいるにきまってる。そういう雰囲気が横溢してて、アタイは大好き。

    他人の芝生は緑に見える、のかもしれないけど、アート(っていうかなんらかの

    表現活動)が日常の生活に浸透してる気がする。アート=特別な人っていう

    くくりではなく、隣りのおっちゃんが出品してるという感じがしてならない。

     

     しかし会場はデカイ、エレベーターに乗ろうとしたらドアは閉まるけど、

    動かないんだ。おんやまぁ、これも作品なのかい、失礼しました。歩き疲れて

    中庭で一服しようかい、と思いつつ

     ふと入った部屋でこんなもんめっけ。なにやらスゴイ器具に写真が合成

    されてるんだ。ふ〜ん。で、一体これはなんだ??

     使い道はさっぱりわからないけど、こういうの大大大好きだから、思わず

    製作者らしき30代の男性に聞いてみた。「これ、いったいなんなの?」と。

     「これは家族の歴史なんだ」「祖父が地図製作の仕事してて、器具は測量

    器械なんだ」「その器具とこれまでの家族写真を合成して、我が家の歴史を

    見て欲しいと思ったんだ」

     ふーん、そういうことなんだ。ナルホドね。そういうことでもいいんだな。

    さりげなくて好感度大大。家族の歴史であるとともに技術者の歴史、ウィーン

    の歴史でもあるような錯覚に陥るのが心地いい。

     この輪っかでノックアウト。厚い真ちゅう板に刻まれた精緻な数字。ミリ単位

    で測量しちゃうんだから、技師の誇りがにぶく光ってる。コレ、欲しいなぁ。

    いくらまでなら買うかな? 300€なら買うだろ、いや500でも買うかも。

    そんなことを考えながらの作品鑑賞も、いとをかし。

     箱に入った器具、そのまま額縁に。これはマトモすぎてちょっとなぁ。

     

     あ〜ぁ疲れた、中庭で一服しよう。写真撮らなかったけど中庭は広い。

    いたるところ紫煙たなびいている、禁煙なんかどこ吹く風だ。喫煙反対の

    方もいるんだろうけど、嫌がる素振り皆無、自然共存まことにステキざんす。

    見上げれば、

     窓からチューブがへし合い押し合い。こういうの、どっかの家具で見た事

    ある。けど、気持ちはわかるからイイんだ。

     

     大仰でなく、キチンとしてなくて、ダラけた雰囲気、なにもこれを生業に

    するつもりもないし、ふだんの生活の中から生まれたひとしずく、誰でも

    表現するココロは持ってるし、作品を通じて来客と交流してみたい。

     オモロそうだから行ってみるか、デカイ会場だから散歩のつもりで、気に

    入った作品があれば立ち話しても楽しいかもね、なにか見つかるかもしれないし。

     

     出品者、鑑賞者それぞれ自由に集って、勝手に解釈したり二言三言話したり、

    ふだんな日常の中の句読点みたいな主旨が気持ちいいんだ。アタイ最近、

    こういうのが大好きに傾いているのを実感してるので、この展覧会は大いなる

    喜びではあったんだわさ。

     

    アートって一体なんなのだろうかしら・・・・・・な、店主でした。

     


    いまさらの皿洗い修行

    0

       10日間のウィーンから帰ってきたのが10月1日、金具の救急搬送、昨日は

       コレをMazdaluce3000師の工房に届けた。LUX 38FD、真空管アンプ。

      アッシが若かりし頃、スイッチの感触に陶然とさせられたもんだ。音? 

      聞いた事はない、なにしろ富士の高嶺に咲く花だったからね。真空管をEL-34に

      改造したもの、十数年ぶりに里帰り、点検修理のため。大阪のO村さんから

      当店に相談、ほいでもってだ。届けたついでに聞いた話しでは、400ボルトの

      電圧?がかかってて気を引き締めないと接触事故がこわい、このアンプ。さらに

      師の手元には1000ボルトのものもあって、気力体力充実するその日まで寝かして

      あるものもある、と。う〜む、危ないもんだのう。

       

       で、ウィーン。目的はいろいろあるけど筆頭はMetcha Matcha。

       フォルクス劇場の側面からパチリ。手前の絵柄は長大なベンチ。この道路を

      右に歩く事数分で、

       Metcha Matchaがある。いましも、突入を試みる三美嬢、Mari、Rina、

      Yoko。着いた翌日が開店日でさ、これからいよいよ開店準備というワケ。

       その後、看板が出来上がって装着。といってもこれが最終形ではない。

       実はこの建物、築300年建築遺産でいずれ一階部分が改装されるんだ。

      費用は市と持ち主が折半だけど、持ち主がダダをこねてて延び延びになって

      たけど、いよいよってことで、店の前面も仮設ということ。

       右が入口扉、入ってすぐにガラ商品スケースと接客カウンター。まず一番

      最初に目につくコレがこの店の顔ともいうべき存在だ。かなりいい。

       白木の木組みがJapanだ。同じ厚みの三本だから、隙き間を利用してバッグ

      かなんかを置ける奥行き狭き棚を後で設置するんじゃないか。

       そしてメインのテーブル2卓。二本脚がそのまま上に伸び、棚も支える。

      柱構造そのものが日本建築の根幹だし、柱から持ち送り(たしかそんな

      名称だった気がする)で前にせり出すのも寺社建築によくある手法だ。異人

      異国でありながらよくもまぁこんなアイデアが実現したもんだ、と感心。

       ハイチェアだから足置きが必要。椅子にも付いちゃいるけどテーブルの下

      にもいるでしょ、でも白木直接に靴底だと汚れちゃう、ってことで上面に

      茶色の別材が。細かい配慮に感心。

       テーブル脚の固定はアジャスター、これで床と天井に突っ張っちゃおうって

      アイデア。う〜む、ナイスなアイデアだ。アタイもやったことがあると言ったら

      床に暖房用の配管が埋設してあるので穴が開けられないための苦肉の策だと。

       奥方向と入口方向

       窓脇の小テーブル、二人用だ。不思議なのは現地での客席は顔と顔が正面で

      向き合う場合のみ、でによってこのテーブルは客席とはみなされない。単なる

      棚みたいなもんか。

       そして奥のカウンター6席。これも客席ではない。エェ〜!いささか

      仰け反るアタイ。つまりこういうことらしい。現地では8席までの飲食店は

      規制がゆるく、それ以上の規模だととても厳しい。でも8席っぽっちじゃ

      商売にはならんから、どこでも椅子を追加して営業してる、査察が入った

      ときは「いやこれはたまたま」とかなんとか言って椅子を片付ければOK

      とのこと。規制はあるものの抜け穴は用意されてる、そのゆるやかさは

      みんな知ってて、むろんお役所だって承知の上。

       

       じゃ、この6脚は何? 実はこれ建前上は従業員用なんだ。へぇ〜ってな

      もんだのっし。でね、オモロいのはトイレも従業員用ってことになってるんで

      表示を付けちゃなんねえの。倉庫とトイレ、同じ扉が並んでいて表示もない

      からお客さんはまごまごする、でもみ〜んな先刻ご承知だから問題ナス、

      うまく出来てるんだなぁこれが。

       アタイは窓際に座り珈琲を飲みつつこんな景色を見ているのが常。道行く

      人々は新しいこの店を物珍しそうに、こんな感じ。それにしてもスタイル

      イイでんなぁ。で、忙しくなったら奥の厨房にまっしぐら、皿洗いスタッフに

      早変わりとキタモンだ。

       開店準備に目の色が変わってる、左Mari右Yoko

       ジャマだ!と言われてもめげずにパチリ。Yokoが向かっているのがシンク、

      アタイの主戦場だ。左脇に食洗器があるものの二日目でダウン、日本じゃ

      考えられないといってもどうにもならず、直るまでひたすら手洗い実行ある

      のみ。小窓の奥は中庭。

       なんせ築300年だからさ、いたるところ古色蒼然、これまで生きてきた

      証というか痕跡というか、あちこちにいろんなモノが付着していて飽きる

      ことはない。皿洗いのアイドルタイムに奥のソファで一服、気持ちいいっ。

      手前に積んであるのは店から外した床石板。飲食店の客席は天井高2.5mが

      必要条件、ココは古いから床をハツって(削って低くすること)その残材が

      ここにってワケさ。

       中庭の窓から見る厨房、左Mari右Yoko。ホントは浴衣着用なんだけど、

      そうは言っていられない準備作業。この後浴衣着用の際は、襟を直して

      あげたり、左前にしちゃいけないよとアドバイスしたり、たすきを買いに

      行ってあげたり、オモロいことテンコ盛りなんでやんす。

       

       滞在中はほとんどココで皿洗いのアタイ、なにも皿洗いに行ったわけじゃ

      ないけど、不快ではなくむしろ快事なんだわさ。行ってみて美術館とか

      コンサートにまったく興味が湧かないことに気が付いたのよね。どうして?

      と考えてみたんだ。そりゃ音楽の都だからコンサートはいくらでもあるし、

      美術館だってゴロゴロあるけど、一向に行く気持ちにならない。店で皿洗って

      いるほうが今の自分の気持ちが満足できる。

       

       今回の旅はMetcha Matchaの視察が主な目的だったけど、それだけじゃない。

      異国の地で日本がどのような存在であるのか、日本料理の反応とか注文の際の

      アレコレ、現地の人々の反応、そんなことに興味があった・・・らしい。

      らしいってのは行ってみてわかったこと。つまり過去の遺産遺物もいいけど

      今のウィーンの現実を知りたい人々の生活や考え方を知りたいということなの。

      また、自分自身が介在すること。与えられるものでなく主体的に自分が動いて

      得られるモノやコトにのみ興味があるってこと。つまり、そういうことが

      分かったんだよな。

       

      とりあえずの第一報・・・・・・・・・・・な、店主でした。

       


      ER搬送

      0

         昨日、ウィーンから帰国。時差ボケはさほどのこともなく・・・と思ってたら

        夜になって頻尿状態になり、あぁ。一見なにごともなかったような我が身なれど

        膀胱だけは敏感反応、っていうか普段通りの活動じゃん。

         

         で、今朝起きてちょいとアタマぼけぼけかな、メールチェックしてたら店電が。

        なんのこっちゃい? 出たらイケヤを組み立てる金具がない、そちらにある?と。

        よくよく聞けば、組み立て現場で必要な個数がぜんぜん足らない、どんなかたち?

        丸っこい?  偏心カム?  答えは心もとなくってどうもこの業界の人じゃない。

        場所を聞けば東品川の倉庫、展示会のための什器の組み立て真っ最中、明日の

        午前7時公開、どへぇ時間ないじゃないっすか?

         金具はこんなもん。これが40個足りないんだと。これがないと組み立てらない

        んだから、そりゃ担当者は焦るわな、しかも今日は日曜日でっせ、金具はHettich

        社製、made in ドイツ、こんなもんそうそうあるわきゃないって。電話で話しを

        聞き、そんじゃHettich Japanの友人に聞いてみるわ、10分したら電話くだはい。

         

         ところが友人に電話は通じず、はぁ〜、念のためアタイの在庫を調べたら、

        なんとこれがあるじゃぁあ〜りませんか。しかも、ほぼ40個だ。再度電話が

        掛かってきてさ、直径を聞いたら15ミリ、おんなじだぁ。とにかく持って行き

        ますから、現場に急行。の前に、友人から☎で、直径は同じでも深さが違うのが

        あるから合わないかもしれへんで。

         

         展示準備は真剣勝負だもんな、間に合わなければ大変なことになる、そんな

        こと知り尽くしているからさ、ありませんよとか取りに来て下さいとかなんて

        とてもじゃないけど言えるわきゃない! シトロエンA子を駆っていざ。現場に

        着いて、担当者に電話、エレベーターで会場へ、どうやらバイクの展示会場だ。

        通訳のドイツ人、責任者のドイツ人が来て見て大喜び、握手を求められてもうた。

         間違いないっす、これっす!! まったくこんなこたぁ奇跡でっせ。聞けば

        責任者のドイツ人がネットで調べて当店に問い合わせを命じたとのこと。そりゃ

        そうだ、責任者だもんな、叩けよさらば開かれん、一縷の望みが叶ったわけだ。

         

         さて、タダってわけにはゆかない、果たしてコレの価値は幾らぐらいになる

        んだろうかね。一個1000円でもOKじゃろ、なんたって喉から手が出るほど

        欲しいんだからな、相手はさ。でも元々これは友人がなにかのときにくれたもん

        だ、つまりタダってこと、それを需要と供給のバランスなんてこの場合関係ない、

        というわけにゃいかんでしょうがに。困っているときはお互い様、国境を越えた

        人助けと思って5000円だけもらったときたもんだ。

         

         バイクはBMW、展示会は明日だけらしい、その後はアジア各国を回るんだとか。

        この金具は板と板を組み立てるもんだけど、板が棚板ならば4個で一枚って勘定、

        アタイに電話くれた人は4個で留めるところを二個で済まそうとおもったけど、

        そんなもんでアジアを巡るのはいかにも心もとない、天の助けと涙ぐむ(そりゃ

        ウソだ)。でも、アタイだったら泣いちゃうかもね。

         

        カミ様ホトケ様・・・・・・・・・・・な、店主でした。

         


        1

        calendar

        S M T W T F S
              1
        2345678
        9101112131415
        16171819202122
        23242526272829
        3031     
        << October 2016 >>

        selected entries

        categories

        archives

        recent comment

        links

        profile

        書いた記事数:690 最後に更新した日:2023/12/23

        search this site.

        others

        mobile

        qrcode

        powered

        無料ブログ作成サービス JUGEM