玉虫厨子
髪を切ってもらって後、帰路代官山のTUTAYA。いつもなら青山のイッセイ・
ミヤケの6店舗巡りをするんだけど、表敬訪問したばかりでね。せっかく出掛け
て、このまま帰るのも癪ということで。これといって観たい映画はなけれども、
今日は緒方拳と思って探したけれど、未見の映画はいと少なく、ならば
三國連太郎か。検索してたら「玉虫厨子」のナレーションやってて、えっ!って
感じで観たワケざんす。
教科書でお馴染みの、コレだ。真っ黒くろ助でなにもわからない。一体
どんなものが描かれていたんだろ? そ〜いえばそうだとふと思い付いてね。
近くに寄ってもわからない。なんたって国宝だからな、誰も近づけない様は
まるで原発みたいだ。元々に作り直されたこの部分は、実はこうらしい
こういうふうになっちょったワケだ。アタシャ、驚いたネ。なんてモダン
なんだと。中央に聳えるのは山なんだろ。てっぺんに家、下の先っぽにも家、
周囲に天女が舞ってるし、雲もたなびいてる。へぇ〜、こういう具合になって
いたんだ。それにしても当時のセンスはどうだ、まるっきりモダンアート
じゃんか。そう思いませんか、各々方。
下に見えるは月か? ウサギがいるように見えるもんな。描線が細い
のにもちょいと驚いたなぁ。それに線の太さが均一なことも。アタイなら
もちっと太細の差をつけたいとこだ。
作られた厨子は二体(この呼称合ってるのかな)。元々を復元したのと
平成風にアレンジされたものだ。手前、下棚板は錺金具取付け後、上は
取り付け前。上板、緑に見えるのは玉虫の羽だ。
集められた玉虫の羽、3000枚とか。日本のみならずアジアから集められた
とのこと。それにしても費用は一体いくらぐらいかかってるんだろう?
ついつい下世話なこと考えちまう。
巾数ミリにカット、それを並べて、接着して、最後にゃ金具で隠してしまう。
なんてこったい、おそれ入谷の鬼子母神だ。ちなみに、羽をそのまま接着出来ず、
一度湯通ししたとのこと。羽を煮るんかい!
屋根は板から切り出す。多分ヒノキだろ。
漆を塗り、金具を付け(上部の黒と赤のコントラストがなんかスゴイ)
組み立てる。まったくもって素晴らしい。屋根は2つに分割されてて、
これは下の屋根。ヒノキを削り出して、漆を塗るんだけどさ、30センチ四方
を塗るのに3〜4時間、仕上げに炭で研ぐのに数倍の時間がかかり、さらに
それを数回繰り返すんだと。根気に脱帽だい。
で、この方が施主様。おっとりしとるんだ。完成する前に亡くなって
しまったとのこと。完成を目にすることなく、亡くなってしまったことは
もちろん心残りだろうけど、作る過程を見れたことだけできっとかなり
満足してたんじゃないかしら。自分のお金で、今まで誰もやろうと
しなかった美術品を模作しよう、ついでに平成版も作っちまおう、たまに
出掛けて作業を間近に観て、感心もし、出来上がりを想像もする、そんな
体験はまるで1300年の時を遡って往時の名工の仕事ぶりを見れることに
通じることだろ。
自分の持ち金を何に使おうか? 何か買うにしろ、どっかに出掛けるにしろ、
なにか作るにしろ、元は自分のお金だからだれにも文句は言われない。誰に
迷惑をかけるでなし、後ろ指を指されることなんかじぇんじぇんアリマセン。
それが気持ちいい。きっと製作に携わった職人の方々もそういうことわかった
上でのことなんじゃないか。だから、きっと気持ちよく仕事出来たんじゃ
ないだろうかネ。
いまどき気持ちのイイことでありました・・・・・・な、店主でした。
- 2017.04.21 Friday
- -
- 12:28
- comments(0)
- trackbacks(0)
- by factio