サスペンスの崩壊?
このまま秋になっちゃうんじゃないか? そんな心配どこ吹く風、蒸し暑い
日が続いている東京でござんす。ふとしたキッカケでヒッチコックを観始めた
今日この頃、その素晴らしさに改めて心酔&堪能&溜飲は下がりっぱなし。
イギリス時代とアメリカ時代のほぼすべてをAmazonで入手、といっても
古いもんだし大量に出回っているからいずれも安価だ。古い作品は後回し、
とりあえずアメリカ時代の新しいのから「サイコ」。映画評論の巨星・双葉
十三郎さんが本編よりも高得点を付けた予告編もついてるし、メイキングも
ある。脚本家の解説が罠の話になり、主演のアンソニー・パーキンスもこの
映画で罠にはまってしまったことを理解していたと。一瞬なんのことやら
わからなかったけど、あまりの適役に役と本人同一視されてしまい、べったり
とレッテル貼られてしまって、抜け出すのに時間がかかった、ことだと
ちょっと経ってから気が付いた。それって「ざんげの値打ちもない」で
デビューした北原ミレイや「新宿の女」の藤圭子と同じじゃん、なにごとも
ほどほどがよろしいのでありましょうか?
「鳥」、最後に家を出る時、手すりにとまってるカラスがロッド・テーラー
の手をつっつくシーン。多くのカラスが出演するけど、なぜか彼だけを
執拗に攻撃する一匹がいて、だったらあそこでつっついたのは、例のカラス
に違いないと思うアタイ。このシーンを撮影するにあたって「あのカラスは
いないよ」とスタッフに言われて安心してたロッド君、あにはからんやいたん
だなこれが。つっつかれた瞬間に謀られたことを知ったにちがいない。
たんまりなヒッチコックの映画を毎日観たいと思ってはいるけれど、観た
夜に奇妙な夢を観るんでそういうわけにはゆかないんダス。時には夢で起きて
しまったりして、寄る年波そのまま眠りに落ちることもできずに、夜中に
ぼんやりヒマをもて余すのも困りもんでっせ。
そうこうしつつ、集大成の呼び声も高き「北北西に進路をとれ」を観たの。
ほとんどのヒッチコック映画は観た事あるから筋は知ってる。トリフォー
との対談本でラストのエロチックなシーンもわかってたんだけど、付録の
解説を観てたら、なんとケーリー・グラントがエバにレストランで撃たれる
シーンで後ろに座っている子供がいよいよって時に耳をふさいでることを
知ってもうた。ありゃ〜、どうしたことだ! 何回も撮るうちに音の大きさ
を知り、両手で耳をふさいでしまったエキストラ子。ケーリーとエバの
ほぼ真ん中のうしろで耳ふさいでる子供がいる、丸見えだ。どうして今まで
気が付かなかったのか。
それを知って再度観たわけ。マジで?って思って、そりゃ再観しなきゃ
ならんでしょ。あぁ、塞いでる、耳を。それを確認したとたん、映ってる
すべてのことが虚構であることがわかっちまって、可笑しいのなんのって、
笑いをこらえるのに困るのことよ。脚本家もなんでこのテイクを採用した
のかわからないって言ってるけど、まさにサスペンスの頂点の緊張感が
蟻の一穴で崩れさるみたいで、可笑しいけど笑うわけにはゆかない、でも
充分可笑しいし、どうしていいのかわからにゃいアタイ。
ジム・キャリーが、真剣に演技してる人に脇からボール投げてみなさい、
それにどう対処するか、架空で虚構な演技に没入してる人にいきなり現実が
飛び込んでくる、それが練習だ、みたいなこと言ってたけど、まさにそれと
おんなじなことかな。違うか?。違う気がするけど。ま、それを知った上で
「北北西に進路をとれ」を観る、丸ごと映画を楽しむってこと、理解するって
いうことはそういうことと違いまっか。
面白さてんこ盛りヒッチコック、飽きさせません・・・・な、店主でした。
- 2017.08.26 Saturday
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- 12:37
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- by factio