思い出せないもどかしさ
過日、当店にオーディオアンプの問い合わせがあった。横浜在住の方から
愛用のアンプがちゃんと直る?、その方法と金額について。聞けば、ネット
オークションで入手したヤマハ B-1を、レストアしてもらったら変な音に
なって戻ってきた。大枚払ってレストアしたけど、戻って来たのは明らかに
違う音でがっかり。そんな経験をすれば誰だって疑い深くもなることは
理解出来る。ちゃんとした音になるならば、レストアしたいけど、ちゃんと
した音になるのかどうかが不安、というわけだ。そして、あれこれ調べたん
だろう。そして当店に辿り着いたということなんだ。
う〜む、B-1かい。それが私の第一印象。稀代の名アンプ、重さも発熱も
一級品だ。むろんレストア代金も。☎でお話を伺い、ま、一度、当地へ来て
詳しいお話を伺いましょ、私のオーディオを聴けるし、聴けばレストアして
くれるmazdaluce3000氏の仕事ぶりも多少はわかるかもしれない。私が
聴いているアンプはすべて氏がレストアしてくれたもんだから。☎の印象
では、来ないかもしれないな、と思ってたけど案に相違して日を置かずして
お運びになった。こりゃかなり切迫してるな、我慢しきれないんだろうな、
と思ったアタイ。
来訪していただいてあれこれ話し、聴きで二時間、結局は、氏の工房に
行くのが一番の早道じゃん、B-1を持ち込んでざっと点検してもらえれば
見通しがつくのと違う?。という展開の末、先週の土曜日、横浜に立ち寄り
B-1を積み込んで、そのまま横須賀へ。
氏を含めての三者面談、状況と事情の理解を深めることに努め、B-1の
レストアのポイントや部品交換の考え方などの授業、一息ついて作業台の
上にB-1をセットし、点検の開始だ。
まずは周囲を目視点検、裏のネジがおかしい、前の持ち主が施した修理の
痕跡から推理ことに始まり、いよいよ上部の蓋を外して基盤の点検に移る。
前後に4枚、左右に二枚の基盤が屹立してる。念には念を入れ細心の注意を
払って、微量な信号を入れて測定器で基盤をチェックする。これは生きてる、
これはまぁまぁ、これが一番ダメ、という具合。傍らで聞いているお客さん
は気が気じゃないんだろう。まるで、定期検診の報告を医者から聞いている
ようなもんだ。その両者のやりとりを聞いてるアッシは、赤の他人まったく
の野次馬だから呑気なもんだ。そして、いい大人が三人角付き合わせて相談
してる図の面白さに声に出して笑ってしまいました。だって、可笑しいんだ
もん。怪訝な顔で振り返るお客さん、そこ笑うとこ? みたいにね。
まずはこのアンプの大問題であるところの大容量コンデンサーを交換
せねばならない、これだけで10万円かかりまする。このコンデンサーの
新品はすでにない、ならば代替え品となるが、これだけの大容量は
いくつかの小容量を繋ぎ合わせるしか方法はなく、それも様々な問題は
残る。一番いいのは同じサイズで元のコンデンサーよりも高品質なものが
あればいい。ってことで探し求めて三千里、時間はかかったけどめっける
ことができて、B-1のレストアを再開したという曰くつきの代物。
コンデンサーを交換した後、残りはもっとも不良な基盤をレストアする。
問題が少ないと思われる基盤はそのままに、それで一応B-1の音質は再現
出来るだろう。一応、提示された予算内で出来る限りのレストアを行い、
持ち帰って自室で試聴して、満足のゆく音であれば残りのレストアを着手
する、となったんだわさ。
なんたって古いアンプですから、元の音を聴いた事がある人はとても
すくない。このお客さんだって新品を入手したわけじゃないからね。でも
元の音がちゃんと再現させれいるのかどうかは当然気になります。でも、
元の音を聴いたことはない、まったく雲をつかむような話が堂々巡り。
お客さんの気持ちもわかる、レストアする氏の気持ちもわかる、でも核心
となるところがきわめて曖昧模糊としている状況、実体のない音にココロ
惹かれる一人としてのアッシ、それぞれのお心内は重々お察し申し上げる
のが正直な気持ちだ。
で一応の点検が終わり、いよいよ電源を入れてみますか?となった。
B-1愛好者の皆様が最も不安なのが出力トランジスタだ。V-FETと呼ばれる
日本独自の部品。すでに代替え品はなく、これが壊れると即粗大ゴミと
なる運命の部品。電源ONしたとたんV-FETが破損する可能性なきにしも
あらず、「ONしていいですか?」とお客さんに同意を求め、さらに念を
押し、さらに念を押す。そのやりともかなり面白く(なんたって野次馬
ですから)口元のニヤニヤを消す事はできない。
結局V-FETが破損していないことがわかり、重体なアンプではないことが
判明して点検落着。もしV-FETが壊れていても代替え品はあるから、心配
はないことは事前にわかっていたんだけどさ。
ホッと一息、ソファに戻って氏のオーディオを聴きつつ雑談のひととき。
流れてきたのはパソコンに入っていた曲、「ムム、コレ聴いたことがある!」
ピンと来たのよ。演奏は押尾コータローだ。「LOVE STRINGS」。
帰ってすぐにアマゾンで入手、きのうから聴き続けている。その8曲目
「ニューシネマパラダイス」、曲は2つに分かれていて後半部のイントロに
聞き覚えがあるんだ。とても短く、すぐに別のメロディになる。たしかに
ニューシネマパラダイスではあるけど、この部分だけ違うとこで聴いた
ことがある気がする。日本語の歌詞で唄われてたような気がする。あぁ、
どこで聴いたんだろか。思い出せないんだ。勘違いかもしれないし。
誰かに聞くこともできないし。気になるなぁ〜。
結局このメロディだけで買ったCD、か・・・・・・な、店主でした。
- 2017.11.29 Wednesday
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- 12:14
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- by factio